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アジアの知財制度

ミャンマー特許法

2019年 3月11日に成立した特許法(Pyidaungsu Hluttaw Law No (7/2019))は、2024年 5月31日に施行されました。
特許要件(第13条)

 (a) 新規性を有すること
    出願日(優先権主張している場合は優先日)を基準とした世界主義を採用。
 (b) 進歩性を有すること
    特許出願された発明が、当該技術分野における当業者にとって自明でない場合には、進歩性を有するものとみなされる。
 (c) 産業上利用可能な発明であること
    産業上利用可能な発明とは、あらゆる産業において製造又は利用することができる発明をいう。

非特許発明の要件(第14条)

 (a) 次の発明は、特許を受けることができない発明である。
   (1) 発見、科学的理論、及び数学的手法
   (2) ビジネス、心理的行為、ゲームを行う単なる手法、ルール、又は方法
   (3) コンピュータ・プログラム
   (4) 非生物学的又は微生物学的な製法を除き、植物又は動物を生産するために必要な生物学的な製法
   (5) 培養されて合成された微生物以外の、自然界の生命体、生物学的生命体の全体又は部分、相補的DNA 配列を含むDNA、細胞、
      細胞系、細胞培養、及び種子を含む、あらゆる動物及び植物

   (6) 人体及び動物に関する実験から得られる診断技術を含む、人体及び動物を手術又は治療する方法
   (7) 新規な用途及び新規な特徴を含む自然界に存在する物又はすでに公知なもの、並びに、調合された化学品及びその発明
   (8) 公の秩序・善良の風俗に反し、又は、人間、動物、植物、健康若しくは環境に悪影響を与える発明、並びに現行法律下、連邦の領域
      内において利用することが禁止されている発明

 (b) 連邦政府が世界貿易知的財産権機関のTRIPS協定に従って特別に声明を発しない限り、医薬品又はその製造方法に関する発明は、
    2033年 1月 1日まで保護しない。

 (c) 連邦政府がTRIPS協定に従って特別に声明を発しない限り、以下のものは2021年 7月 1日まで、保護しない発明である。
   (1) 農業に使用される化学物質
   (2) 食料品
   (3) 微生物に関する製品
 (d) 連邦政府はTRIPS協定に従い、(b) 及び (c) に規定された特許を受けることができない期間を変更又は指定することができる。 

特許を受ける権利を有する者(第15条、第16条、第17条、第24条)
  
(a) 発明者は特許を受ける権利を有する。また、その譲受人又はその承継人は特許を出願する権利を有する。
  (b) 同一の発明が2人以上の者によって個々に行われた場合、最先の特許出願人、又は優先権を主張する場合に適法な最先の優先権を
     主張した者が、特許を受ける権利を有する。

職務発明(第17条)
   使用者と従業者間の雇用契約に基づいて又は当該雇用契約の結果として発明がなされた場合、
   (a) 従業者が発明を行い、かつ雇用契約の条項に反しないときは、使用者が特許を受ける権利を有する。
   (b) 発明が完成したことを従業者が使用者に書面で通知した後6月以内に使用者が特許出願しなかった場合、
      使用者は特許を受ける権利を放棄したとみなされ、従業者が特許を受ける権利を有する。

特許出願(第18条、第19条)

  (a) 願書は、ミャンマー語又は英語で行う。
  (b) 登録官*の要請があれば、願書をミャンマー語から英語に又は英語からミャンマー語に翻訳しなければならない。
       *登録官とは、知的財産権の登録に関する職務を遂行する部局*の局長をいう。
      *部局とは、商業省により知的財産権に関する事件を取り扱うこととされた部局をいう。

願書(第18条、第20条)

 (i)    特許出願の申請
 (ii)   出願人又は法人の氏名、国籍及び住所、及び発明者の氏名、国籍及び住所
 (iii)  代理人の氏名、国民登録証番号及び住所(代理人を有する場合)
 (iv)  発明の詳細な説明
 (v)   発明の名称
 (vi)  要約
 (vii)  1つ以上の請求項(特許請求の範囲(第23条))

必要な場合の添付書類(第20条、第22条)

 (i)     事業所が所在する国の住所及び名称(出願人が事業所を有する場合)
 (ii)    法人の登録番号、種類及び国名(法人が出願する場合)
 (iii)  図面(図面を有する場合)
 (iv)  優先権を主張する旨及び証拠(優先権主張を行う場合)
 (v)   博覧会優先権主張及びその証拠(博覧会優先権を主張する場合)
 (vi)   代表者以外の共同出願人全員による同意書(共同出願人の一人が共同出願人全員を代表して出願に署名した場合)
 (vii)  請求項に係る発明の実施に直接又は間接に使用された伝統的知識への合法的なアクセス及び使用に関する宣言書
 (viii)  早期公開請求書(早期公開請求を要求する場合)
 (ix)   知的財産権機関及び部局が随時指定した他の追加書類

出願日の認定(第21条)

 特許出願を受理した日を、特許出願日とみなす。

発明の詳細な説明(第22条)

 (a) 発明の詳細な説明は、当業者が発明を実施できるための書類であり、出願日又は優先権の主張日に、発明者が知っている発明を実施
    するためのベストモードを示す。
 (b) (a) で主張した発明の詳細な説明において特定分野の当業者が利用又は実施するのに十分な情報を説明している場合には、発明の
    詳細な説明が明確かつ十分であるとみなし、さらなる審査を必要としない。
 (c) ミャンマーにおける遺伝資源若しくは生物資源、又は当該資源に関連するか否かに関わらず伝統的知的情報が、同意なく直接的若しくは
    間接的に使用されている場合、保護を求める発明は発明の詳細な説明に明確に記載する。

特許請求の範囲(第23条)

 (a) 保護を求める発明を請求の範囲に記載する。
 (b) 特許請求の範囲は、明確かつ簡潔に十分に記載する。明細書及び図面は説明のために用いる。

先願(第24条、第25条)


発明の単一性要件
(第27条)
 出願は、一つの発明又は一つの一般的発明概念が関連する一群の発明に関するものでなければならない。

出願審査請求(第26条)

 特許出願人は出願日から36月以内に、特許出願の実体審査をする旨の請求を登録官にしなければならない。
 当該申請を所定の期間内に提出しない場合、特許出願は放棄したものとみなされる。

補正(第28条、第29条)
 (a) 特許出願人は、登録官の特許付与前、拒絶する前、又は登録官の決定に対する審判の審決がされる前に、出願書類、翻訳文又は
    補助書類の方式的誤り等を正すため、登録官に補正書を提出することができる
 (b) 新規事項追加補正の禁止
 (c) 出願分割が可能

審査(第30条)

 (a) 審査官は、発明の国際分類に従って発明を分類し、発明が第19条及び第20条の条項を満たしているか否かを審査した後、当該条項を
    満たす出願を意見とともに登録官に提出する。
 (b) 審査官は、出願が第19条及び第20条の条項を満たしているか否かを審査した後、条項を満たしていないと判断した場合、登録官の
    承認を得て、出願人に、出願を補正するように通知する。
    出願人が当該通知の受領から60日以内に補正を行わない場合は、当該出願は取り下げられたものとみなす。
 (c) 審査官は、必要な補正が (b) の所定期間内に受領された場合、登録官に報告すると共に審査した出願書類を提出する。

特許権の回復(第31条)
 特許出願人又は特許権者が手続きする期間を徒過し、当該行為により特許又は出願に関する権利の喪失をもたらす結果となった場合で
 あって、次の事項に該当する場合、当該特許出願人又は特許権者は、登録官に対し権利の回復を申請することができる。
  (a) 所定期間内に手続を行わなかったために取下げられた日から60日以内に上申書を提出した場合
  (b) 所定期間に手続を行うことを怠った理由に関して、必要書類、 情報又は説明を添付して提出した場合
  (c) 所定期間内に手続を行うことを怠った理由を十分に上申書に記載した場合
  (d) 所定の費用を支払った場合

出願公開制度(第32条)

 出願日から18月後に公開される。なお、請求による早期公開も導入されている。

付与前異議申立制度(第33条~第35条)
 特許出願に対する異議を申し立てようとする者は、登録官に対し、公開日(第32条)から90日以内に、第13条及び第14条に記載された
 要件を記した異議申立書を提出することができる。

審査官
(第36条)
 審査官は、第13条(特許要件)、第14条(非特許発明の要件)、第22条(明細書載事項)、第23条(特許請求の範囲)及び
 第27条(発明の単一性要件)の規定について、発明が特許性を有するか否かを審査し、意見書と共に登録官に報告する。


登録官の業務
(第37条)
 登録官は特許出願に関し、次のことを行う。
  (a) 審査官の意見を精査した後、特許査定又は出願を拒絶する。
  (b) 登録簿に当該特許査定又は拒絶査定を記録し、出願人に通知する。さらに、所定の方法で特許査定又は拒絶査定した旨を公開する。
  (c) 特許が付与された場合、特許証を出願人に発行する。

外国でされた出願の国内審査対応
(第38条)
 登録官は、外国で出願された特許出願を国内において審査するため、所定の期間内に次の書類を提出するよう特許出願人に通知することができる。
  (a) 外国の知的財産庁から得られる調査報告書及び審査報告書の写し
  (b) 出願人が外国から取得した特許証の謄本
  (c) 外国知的財産庁によって拒絶された、当該特許出願、当該出願に含まれる請求の範囲の写し、又は、付与された特許の無効若しくは
     取消しに関する決定の写し。

国際知的財産権機関、外部特許庁に審査依頼が可能
(第39条)
 登録官は、特許出願の審査に関して、知的財産庁の承認を得て、外国の政府省庁若しくは機関、国際機関又は外国特許庁に特許出願の
 審査を依頼することができる。

出願非公開制度(第42条)
 登録官が特許出願の内容が国家の安全保障及び国民の安全に害を及ぼすと判断した場合、知的財産庁の承認を得て出願を保留し、
 公開しないことができる。


優先権
(第43条~第46条)
 パリ条約若しくは世界貿易機関(WTO)加盟国においてした出願の特許出願人又はその承継人は、当該加盟国における最初の出願日
 から1年以内に同一の発明について出願した場合、当該最初の出願日に基づく優先権を有する(第43条)。
 パリ条約又は世界貿易機関加盟国において主催され、又は認証された国際博覧会において展示された発明に関し、最先の展示日から1年
 以内に展示に係る発明を知的財産庁に出願した場合、当該開催日の出展に基づく博覧会優先権を有する(第44条)。
 なお、当該博覧会優先権の期間は、第43条に基づく優先権の期間を超えないものとする。
 なお、現時点でミャンマーはパリ条約に未加盟である。

特許権の存続期間(第47条)
 特許権の存続期間は、特許出願日から20年である。

手数料
(第48条)
 特許権者又は出願人は、特許又は特許出願を維持するために、以下の通り所定の手数料を知的財産局に支払わなければならない。
  (a) 手数料の支払期日前6か月以内に所定の手数料を支払わなければならない。
     6か月の期間内に手数料が支払われない場合、登録官は特許又は特許出願を失効させる。
  (b) 手数料の遅延支払について6月の猶予期間が認められる。この場合、所定の手数料及び延滞料を支払う。

特許権
(第51条~第52条)


通常実施権
(第53条)


特許権が及ばない範囲
(第54条)

 特許権は、以下のものには及ばない。
  (a) 特許発明の非商業的又は私的使用
  (b) 実験又は研究の目的で行われた行為
  (c) 一時的又は偶発的に本国の領域に侵入する他国の航空機、陸上車両又は船舶内における物品の使用行為
  (d) 出願日又は優先日前に善意で特許発明を使用し又はその使用のために準備をしていた者が行った行為
  (e) 特許権者又はその同意を得た者が、特許発明を販売し、販売の申出をし、又は輸入する行為
  (f) 製品の製造、組み立て、使用、販売又は輸入を規制するミャンマー又はミャンマー以外の国の法律に基づいて要求される情報の提供の
     正当用途のためにのみ、特許発明を製造し、組み立て、使用し、販売し又は輸入する行為
  (g) 登録医または歯科医の処方箋に従い、薬局で特定の人のために調製する行為

特許権の移転 (第56条~第59条)

特許の実施許諾
(第60条~第64条)


強制実施権等
(第65条~第73条)


特許の放棄
(第74条、第75条)

 特許権者は登録官の要請に従い、特許権を放棄することができる。

特許取消
(第76条~第77条)

 利害関係人又は法人の申請により、登録官は所定の場合(第77条)、特許の全部又は一部を取り消す。

特許、特許出願の登録抹消
(第78条~第79条)

 登録官は、所定の事実が生じた場合、特許又は特許出願の登録を抹消する。

小発明(実用新案) (第19章:第80条~第88条)
 登録要件(第80条)
  (a) 小発明が新規、かつ、産業上利用可能である場合、小発明について小特許の登録出願を行うことができる。
  (b) 次の場合、小特許の保護から除外される。
    (1) ビジネスフローの方法
    (2) 化学品、医薬品、生物体、金属体、他のそれらの成分及び組成物
    (3) 本法により特許保護が禁止されているもの
    (4) 彫刻、建築物又は既存の装身具
  (c) 小発明は、当業者が小発明を実施できるように明確かつ十分に記載され、特に小特許の使用方法又はどのようにその機能が改良された
     のかを記載する。
  (d) 本章の条項に該当しない場合は、必要に応じ特許権及び特許出願の規定が小特許に適用される。

 小特許の存続期間
(第81条)
  小特許の存続期間は、小特許の出願日から10 年である。

 審査
(第82条)
  (a) 審査官は、出願が第19条、第20条及び第80条 (b) の規定を満たしているか否かを審査した後、審査官の意見とともに、登録官に出願を提出する。
  (b) 審査官は、必要であれば出願人が補正することができるように、登録官の承認を得て、出願人に通知する。
     出願人が当該通知の受領から30日以内に出願を補正しない場合、登録官にその旨が報告され、当該出願は放棄したものして、
     取下げたものとみなされる。
  (c) 審査官は、(b) に記載された所定期間内に必要とされる補正書を受領した場合、補正された出願を審査し、登録官に意見とともに
     当該出願を提出する。

 公開
(第83条)
  登録官は、第82条に従い提出された意見を精査した後、異議申立ができるよう公衆に通知するため、所定の方法で出願を公開する。

 異議申立
(第84条)
  (a) 小特許の登録出願に対して異議を申立てる者は、公開日から60 日以内に、所定の費用を支払った後、十分な証拠とともに登録官に
     異議申立書を提出する。
  (b) 異議申立書を受領した場合、登録官は、出願人が所定期間内に異議申立に対して反論できるように、出願人に通知する。
  (c) 審査官は、異議申立理由及び反論を審査した後、審査官の意見とともに登録官に調査報告を提出する。

 小特許付与
(第85条)
  小特許の出願に関して、登録官は、
   (a) 公開日から60日以内に異議申立が行われない場合、小特許を付与することができる。
   (b) 異議申立が行われた場合、異議申立理由、調査報告、審査官の意見を審査した後、申立てを認容又は却下することができる。
   (c) 登録簿に登録査定又は拒絶査定を登録し、出願人に通知する。さらに、登録査定又は拒絶査定は、所定の方法で公開される。
   (d) 登録官は、小特許が付与した場合に出願人に小特許証を発行する。

 取消
(第86条)
  個人又は法人の申立てにより、小特許が次のいずれかに該当する場合、登録官は小特許を取り消す。
   (a) 小特許が第80条 (a) (b) の要件を満たさない場合
   (b) 小特許権者が小特許を有する資格を有さないという反駁できない証拠がある場合

 出願変更
(第87条)
  (a) 特許出願人は、特許が付与又は拒絶される前のいつでも、所定の費用を支払ったうえで、特許出願を小特許の出願に変更することが
     でき、先の出願日が小特許の出願日とみなされる。
  (b) 小特許の出願人は、小特許が付与又は拒絶される前いつでも、所定の費用を支払ったうえで、小特許の出願を特許出願に変更する
     ことができ、先の出願日が特許出願日とみなされる。
  (c) (a) の出願は、2回以上行うことはできない。

 出願
(第87条)
  出願人は、特許出願と同一の発明の特許出願又は小特許の出願を同時に行うことができない。

国際登録出願が可能
(第89条~第92条)
 特許協力条約には現時点で加盟していないが、ミャンマーが特許協力条約に加盟した後であって、国際登録を希望する場合には、所定の
 方法により出願することができる旨の規定があります。
 ミャンマー連邦共和国を指定国とする国際出願を出願した場合、登録官は、特許協力条約に従い付与された国際出願日を、本法に基づいて
 ミャンマーに出願された特許出願の出願日とみなす(第90条)。

不服審判
(第93条)
 本法に基づき登録官が下した決定に不服がある者は、知的財産権機関に対し当該決定日から60日以内に、審判を請求することができる。

知的財産権裁判所
(第94条~第104条)
 連邦最高裁判所は、知的財産権裁判所を設立し、知的財産権機関の決定に不服のある者は、当該決定の通知を受領した日から90日
 以内に、知的財産権裁判所に提起をすることができます(第94条)。

罰則
(第105条~第106条)


ミャンマー特許法の詳細は、以下のウェブサイト(英語)をご参照ください。

 IPD Myanmar