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香港特許制度

 最新制度 2020年7月9日施行
 香港での特許出願に関する準拠法は、
 特許条例(Cap. 514)(以下、「特許条例」) ― 特許の規定をひとつにまとめた法律
 特許(一般)規則(Cap. 514C)(以下、「特許規則」) ― 特許手続きに関する細かい規定
 特許規則(Cap. 514B) ― 過渡的取決め
 特許(特許庁の指定)告示(Cap. 514A)
 である。

【項目】

1.出願言語
 中国語、英語


2.出願の種類

 現行の香港特許法で付与される特許には、標準特許(Standard patent)(R)、(O) と短期特許(Short-term patent)があります。
 現行法の下での標準特許は「確認特許」 (R) と呼ばれることもあります。

 2019年法改正により、「確認特許」のほかにもうひとつ、「原授標準特許」(Original Grant Patent、OGP)(O) というオプションが標準特許に
 追加されました。いわば、直接出願特許ともいうべきものです。


 2.1 標準特許(確認特許)(R)(従来から)

  標準特許とは、香港特許庁に直接出願するものではなく、指定された特許庁で付与された特許出願に基づいて付与される特許をいいます。
 指定された特許庁とは、中国特許庁、英国特許庁及び欧州特許庁(英国を指定するEPC出願)をいいます。香港では実体的な審査はされず、
 対応する中国出願、英国出願、または英国を指定するEPC出願の審査結果に基づいて登録されるので、確認特許ともいわれます。


 2.2 標準特許(原授標準特許) (O)(改正法にて新設)

  2019年法改正により、「確認特許」のほかにもうひとつ、「原授標準専利制度」(Original Grant Patent、OGP)というオプションが標準特許に
 追加されました。

 外国の指定特許庁への出願を経由することなく、香港に直接出願することができます

 2.3 短期特許
  短期特許とは、香港特許庁に直接出願し、方式的要件についてのみ審査され付与される特許をいいます。
 独立請求項の数は1個です。新規性等の実体審査は行われません。。


3. 保護対象
 3.1 発明の定義
  産業上の利用可能性があり、新規、かつ、進歩性がある場合は、特許を受けることができる(特許条例第9A条1項)。 

 3.2 特許対象外

  香港で特許が認められない発明は以下の通り(特許条例第9A条):

  ・ 発見、科学理論又は数学方法
  ・ 美的創造
  ・ 精神的活動を実行し、遊戯を行い若しくは事業を行うための計画、規則若しくは方法、又はコンピュータ・プログラム*
  ・ 情報の提供
  ・ 外科的処置若しくは治療による人若しくは動物の体の処置の方法又は人若しくは動物の体に実施される診断の方法
  (ただし、これらの何れかの方法による使用のための製品、特に物質又は組成物には適用されない)

  ・ その公開又は実施が公の秩序又は道徳に反する発明は
  (ただし、発明の実施は、それが香港の現行法により禁止されるという理由のみでは公の秩序又は道徳に反するものとはみなされない)

  ・ 植物又は動物の品種、及び、植物又は動物の生産のための本質的に生物学的な方法(微生物学的方法又はその製品を除く)

  * コンピュータ・プログラムは特許可能な主題ではない(それは一般に著作権によって保護されていることから)。
   一方、当該発明が「技術的結果」を達成する限りにおいてコンピュータ・プログラムが一特徴である場合に特許出願が許容される状況があり得る。


4.登録要件

  特許登録処は標準特許(原授標準専利)(O)出願に対する実体審査において、出願に係る発明が下記の要件を満たすか否かについて審査を行う。
 いずれかの要件が満たされない場合、当該発明が特許性に欠けているとして特許されない可能性がある。

  標準特許(確認特許)(R)、及び短期特許では、出願時に実体審査を行わないので、発明の非特許性を根拠として標準特許(確認特許)(R)、
 又は短期特許付与が拒絶されることはない。しかし、登録官は、当該発明の公開又は実施が公の秩序又は道徳に反する場合、
 特許の記録および付与を拒絶できる(特許条例第37条)。


 4.1 新規性

  4.1.1 発明の新規性
  発明は、先行技術の一部を形成しない場合、新規であるとみなされる(特許条例第9B条1項)。
  ここで、「技術水準」は,対象出願の基準日前に,書面又は口頭の説明,実施又はその他の何れかの方法の何れによるかを問わず公衆に
 (香港又は他所で)利用可能になったすべてを含む(特許条例第9B条2項)。


 4.1.2 新規性喪失の例外

  標準特許(原授標準特許)(O)(及び短期特許出願の主題である発明の開示は、以下の場合には、当該発明が技術水準の一部を構成するか否かの
 決定に際し、考慮されない(特許条例第37B条、109条):
  (1) みなし出願日に先立つ6月以内に、出願人又は発明時の所有者に対する明らかな濫用による開示が行われたこと
   (2) みなし出願日に先立つ6月以内に、出願人又は発明時の所有者による公的な国際博覧会におけるに発明を展示したこと
 ただし、上記(2)の場合、適用を受けるため、発明はそのように展示された旨の陳述書、及び、その陳述の所定の裏付証明書を出願と同時に提出する必要がある(特許条例第37B条3項、109条)。

 4.2 進歩性

  発明は、それが技術水準を考慮して、当該技術の熟練者にとって自明でない場合は,進歩性を有するものとみなされる(特許条例第9C条1項)

 4.3 産業上の利用可能性

  発明は、それが農業を含む何れかの種類の産業において製造又は実施され得る場合は、産業上の利用可能性を有するものとみなされる
 (特許条例第9D条)。


 4.4 発明の単一性

  単一性の規定はない。
  ただし、短期特許出願の場合は、独立クレームは2つに限られる。



5. 標準特許(確認特許)(R)申請

  5.1 出願人
  発明の標準特許付与を求める出願人は,次の者である(特許条例第12条)。
  (a) 発明の特許につき指定特許出願における出願人として指名されている者、又は香港における指定特許出願に基づく権利の権原承継人、又は
  (b) (a)に規定の者に優先して、香港における発明の所有権の権利者

 5.2 出願及び審査の流れ

  香港での標準特許(確認特許)(R)による保護を求めるには、まず中国特許庁、英国特許庁及び欧州特許庁(英国を指定するEPC出願)に出願をする必要があります。香港では実体的な審査はされず、対応する中国出願、英国出願、または英国を指定するEPC出願の審査結果に基づいて登録されるので、確認特許ともいわれます。
  標準特許(確認特許)(R)により特許の付与を求める場合、二つの手続きが必要です。
 ・ 第一段階手続き:指定された特許庁における出願の公開日から6ヶ月以内に、先ず香港特許庁に「記録請求」手続きをとる必要があります
  (Request to Grant)。

 ・ 第二段階手続き:指定された特許庁における実体審査が完了し、特許になった場合に特許の登録日から6ヶ月以内に、又は指定された特許庁の
  出願の記録の請求の香港における公開から6ヶ月以内(いずれか遅く満了する方)に、「登録請求」をすることが必要です
 (Request for Grant & Registration)。


 5.2.1 記録請求の提出

  ・ 出願人は、指定特許庁における出願公開日後6 月以内のいつでも,登録官に対しその指定特許出願の記録を登録簿に記入するよう請求することができる
  (特許条例第15条1項)。

  ・ 記録申請に記載すべき事項(特許条例第15条、特許規則第8条):
   ➢ 指定特許出願の写し
   ➢ 指定特許出願が発明者として何人かの名称を含まない場合は、出願人が発明者と信じる者を特定する陳述書
   ➢ 請求人の名称及び住所
   ➢ 請求人が指定特許出願に出願人として記載されている者とは別の場合は、発明の標準特許(確認特許)付与出願の権利を説明する陳述書
    及びその陳述書を裏付ける所定の書類

   ➢ 先の出願に基づき指定特許庁で享受される優先権に関し、同条に基づく優先権が主張されている場合は、次の詳細を示す陳述書
    (i)  主張されている優先日
    (ii) 先の出願が提出された国
   ➢ 該当する場合、不利益とならない開示の詳細
   ➢ 書類送達のための香港における宛先
   ➢ 英語と中国語の両方による発明の名称と要約書
   ➢ 所定の文書および情報の翻訳
  ・ 国際出願を基礎とする指定特許出願の場合
   国際出願に基づく標準特許(確認特許)(R)記録請求は、指定特許出願の公開日が、次の通りとする(特許条例第16条、特許規則第15条)。
   出願が中国を指定する場合
     ①国際出願が国際事務局により中国語で公開された場合には、中国国家知識産権局により国内出願通知が発せられる日、又は
     ②国際出願が国際事務局により中国語以外の言語で公開された場合には、中国国家知識産権局により当該国際出願が特許公報に公開された日。
   出願が EU を指定する場合
   国際出願が国内段階に移行した旨を示す関連書誌事項の、欧州特許庁によるその公報における公開日。
   
  出願が英国を指定する場合

   国際出願が国内段階に移行した旨を示す関連書誌事項の、連合王国特許庁によるその公報(特許)における公開日。
  ・ 出願に添付すべき文書(特許規則第16条b号):
    (i) 国際事務局により公開される国際出願の写真複写
   (ii) 指定特許庁により公開される国際出願の翻訳文の写真複写、及び
   (iii) 国際出願に関する指定特許庁における何らかの情報公開の写真複写

 5.2.2 第一段階の方式審査

  記録請求審査は、最小限の請求要件を満たしていることを確認するために行われる。不備がある場合、登録官は、欠陥を補正する機会を出願人に与える。
 出願人が通知日後1 月以内に欠陥を補正することができる(特許条例第18条、特許規則第16条)。


 5.2.3 第一段階の公開

  記録請求の詳細は、登録原簿に記入され、官報に公示される(特許条例第20条)。

 5.2.4 第二段階の登録申請・権利付与

  ・ 出願人は、
   (a) 指定特許出願が登録簿に記録され、記録請求が公開されており、また記録請求が拒絶されず、又は取下若しくは放棄とみなされない場合、及び
   (b) 指定特許出願により指定特許庁において特許が付与されている場合
     登録処に対し指定特許を登録し、標準特許(確認特許)(R)の付与を申請することができる(特許条例第23条1項)。
  ・ 請求は,指定特許庁による指定特許付与の日付又は記録請求の公開の日付の何れか遅い方の後6 月以内に行わなければならない
   (特許条例第23条2項)。

  ・ 提出書類に記載すべき事項(特許条例第23条3項、特許規則第19条):
   ➢ 指定特許の公開された明細書の認証謄本であって、指定特許庁により公開された説明、クレーム及び図面を含むもの
   ➢ 請求人が発明の標準特許(確認特許)(R)出願人として登録簿に記載されている者とは別の場合は、発明の標準特許(R)付与出願の権利を
    前者が有することを説明する陳述書及びその陳述書を裏付ける所定の書類

   ➢ 記録請求が、指定特許庁において主張された優先権を基礎にして、優先権が主張されている旨の第15 条(2)(e)に基づく陳述書を含む場合は、
   指定特許庁に提出され、当該優先権を主張し、かつ、裏付ける書類の所定の複写

   ➢ 英語と中国語の両方による発明の名称
   ➢ 所定の文書の翻訳
  ・ 出願手数料及び公開手数料は、登録及び付与請求の一部の最先の提出後1 月以内に納付しなければならない(特許条例第23条5項)。

 5.2.5 第二段階の方式審査

  ・登録・付与申請を審査する。申請に関して不備がある場合には、出願人は指定された期間内(その通信日から1 月以内)に補正する
 (特許条例第25条、特許規則第23条)。

  ・出願の方式を審査する。不備がある場合、登録官は、出願人に対してなされる通知する。出願人は、通知日後2 月以内に補正することができる
 (特許条例第26条、特許規則第24条)。

  ・不備が補正された場合、申請は処理手続に進む。補正されない場合、出願は取り下げられたものとみなされる
 (特許条例第25条、特許規則第24条)。


 5.2.6.第二段階の承認・公告

  登録官は、必要事項を登録原簿に登録し、標準特許(確認特許)(R)を付与する。特許明細書、所有権者および発明者の氏名が官報に公示される
 (特許条例第27条)。


 5.2.7 第二段階の更新

  標準特許(確認特許)(R)については特許出願のみなし出願日から始まる20 年の期間の終了まで有効に存続する(特許条例第39条1項)。
  標準特許(確認特許)(R)を、特許付与日後に到来する特許出願のみなし出願日の1 年目の日から第3 年次又はその後続年の満了後、

 更に1 年有効に維持することを希望する場合は、所定の更新手数料を、当該3 年次又は場合により、その後続年次の満了前であって、
 当該満了日前3 月以内の日までに納付しなければならない(同条2項、3項)。




6. 標準特許(原授標準特許)(O)申請

 6.1 出願人
  発明の授標準特許出願は、単独又は他の者との共同で何人も行うことができる(特許条例第37G条)。

 6.2 出願及び審査の流れ

  2019年法改正により、「確認特許」のほかに、「原授標準専利制度」(Original Grant Patent、OGP)というオプションが標準特許に追加されました。
  外国の指定特許庁への出願を経由することなく、香港に直接出願することができるようになりました。

  6.2.1 登録申請

   特許出願の登録申請は以下の書類と共に特許登録処に手交又は郵送すること(特許条例第37L条)。
    ➢標準特許(原授標準特許)(O)の付与を求める願書
    ➢次の事項を記載する明細書:
     (i)  出願の主題である発明の説明
     (ii)  少なくとも1 のクレーム、及び
     (iii) 説明又はクレームにおいて言及される図面
    ➢要約書
    ➢香港における送達住所
    ➢不利益とならない開示が主張された場合、その主張についての陳述書及び証拠
    ➢出願人が先の出願の優先権の利用を望む場合は、優先権陳述書及び先の出願の謄本
    ➢発明がその実施のために微生物の使用を必要とする場合は、当該微生物の試料を公衆が利用できる可能性に関する情報(ある場合)
    ➢出願人の氏名と住所
    ➢発明者の氏名と住所
    ➢出願人が発明者でない場合は、出願人がどのような方法で発明の標準特許(原授標準特許)(O)を出願する権利を得たかを示す
       所定の様式による陳述書を含まなければならない

    ➢英語と中国語の両方による発明の名称と要約書
    ➢所定の文書および情報の翻訳
    ➢出願手数料及び公開手数料は、所定期間内に納付しなければならない。

 6.2.2 出願の提出日を指定するための審査

  ・ 標準特許(原授標準特許)(O)出願のために提出された書類が次のものを含む場合、登録官はその出願に提出日を与える(特許条例第 37M条):
   ➢標準特許(原授標準特許)(O)を求めている旨の表示
   ➢出願人を特定する情報
   ➢発明の説明と見えるもの、又は、標準特許(原授標準特許)(O)出願の主題である発明の説明及び図面(ある場合)が所定の出願に完全に含まれる
   旨を示す陳述書と共に,出願人又は出願人の前権利者が行った先の所定の出願への言及
  ・ 出願の出願日は、出願が最低要件を遵守する最先の日である。出願に不備がある場合、登録官は出願人に2月以内に不備を補正するように通知を与える。期限内に補正できなかった場合、出願は標準特許(原授標準特許)(O)出願として取り扱われない(特許条例第37 M条2項、4項、5項、特許規則第31 V条2項)。

 6.2.3 方式審査

  登録官は開示前に、出願が方式要件を満たしているか否かについて審査する(特許条例第37P条1項)。出願に補正することができない方式要件に関する欠陥がある場合は、当該出願は、拒絶される(同条2項)。出願に補正することができる方式要件に関する欠陥がある場合、登録官は、出願人に対して通知し、通知日後2 月以内に欠陥を補正するよう出願人に要求する。期間内に欠陥を補正する対策が講じられないときは、出願は、取り下げられたものとみなされ、その他の場合は、出願は、拒絶される(同条3項、4項、特許規則第31Y条1項)

 6.2.4 出願公開

  標準特許(原授標準特許)(O)の出願に提出日が与えられ、その出願が方式要件を満たしていると登録官より同意された場合、登録官は、出願日後18 月、又は、優先権主張がある場合は、主張される最先の優先日後18 月を満了する時に速やかに、出願を公開し、その公開を官報に公示する(特許条例第37Q条1項、特許規則第31Z条1項)。出願人は、早期公開を請求することができる(特許条例第37Q条2項)

 6.2.5 実体審査

  ・ 出願人は出願日から3年内、又は優先権が適用される場合は優先権主張後の3年内、登録官に標準特許(原授標準特許)(O)の実体審査を行うための申請(審査請求)を提出する必要がある。提出しなかった場合、当該申請は取り下げられたものとみなされる(特許条例第37 T条、特許規則第31 ZC条2項)。
  ・ 請求のための所定の手数料は、請求の日後1 月までに登録官に納付しなければならない(特許規則第31 ZC条3項)。
  ・ 出願が(特に当該発明の特許性について)審査要件を満たさない場合、登録官は出願者に審査通知(examination notice)を出す。
   出願人は審査通知を受けた4ヶ月内に、登録官に審査通知に対する応答を提出しなければならない
   (特許条例第37Ⅴ条3項、特許規則第31 ZE条1項)。

  ・ 登録官より更なる審査通知(further examination notice)を受けた場合、出願人が、通知日後4 月以内に、登録官に更なる審査通知に対する応答を提出しなければならない(特許規則第31ZF、ZG条)。
  ・ 出願人が期限内にいずれかの審査通知、又は更なる審査通知に応答しなかった場合、当該出願は、取り下げられたものとみなされる
  (特許規則第31ZE条2項、第31ZG条2項)。

  ・ 登録官が依然として出願人の審査通知、又は更なる審査通知に対する応答が審査要件を満たしていないと判断した場合、登録官は標準特許(原授標準特許)(O)の付与を拒絶する仮決定(provisional decision of refusal)を下す(特許規則第31ZH条)。
  ・ 出願人は仮決定が下された2月内に、陳情書、又は出願補正請求書を提出することで、登録官の見解の再審査請求をすることができる
  (特許規則第37ZI条)。

  ・ 再審査請求後、登録官が依然として当該出願が審査要件を満たしていないと判断した場合、出願人に再審査見解書(review opinion)を出す(特許規則第37ZJ条)。それに対し、出願人が、再審査見解書の日付後2 月以内に登録官に再審査見解書に対する応答を提出しなければならない(特許規則第37ZK条)。
  ・ 登録官はそれでもなお当該出願が要件を満たしていないと判断した場合、出願人に更なる再審査見解書(further review opinion)を出すことができる(特許規則第37ZL条)。その場合、出願人が、更なる再審査見解書の日付後2 月以内に登録官に更なる再審査見解書に対する応答を提出しなければならない(特許規則第37ZM条)。出願人が期限内に応答しなかった場合、登録官は出願人に最終拒絶通知(final refusal to grant the patent)を出す(同条4項)。

 6.2.6 付与及び公告

  ・ 登録官は、標準特許(原授標準特許)(O)の出願、及び請求された補正が審査要件をすべて遵守しているとの見解を有する時、発明の標準特許(原授標準特許)(O)を付与する(特許条例第37X条1項)。
  ・ 登録官は、当該標準特許(原授標準特許)(O)の特許明細書及び出願者・発明者の氏名を公開、出願人に特許に関する付与証明書を発行、官報に付与を公示する(特許条例第37X条2項)。
  ・ 登録官は当該出願が全ての審査要件を遵守していないと判断した場合、発明の標準特許(原授標準特許)(O)の付与を拒絶する
  (特許条例第37Y条)。


 6.2.7 更新

  標準特許(原授標準特許)(O)を特許出願の出願日から第3 年次又はその後続年の満了後、更に1 年有効に維持することを希望する場合は、
 所定の更新手数料を、当該3 年次又は場合により、その後続年次の満了前であって、当該満了日前3 月以内の日までに納付しなければならない。

 更新手数料がそのように納付されない場合は、標準特許は(原授標準特許)、当該3 年次又はその後続年次の満了時に効力を停止する
 (特許条例第39条)。



7.短期特許

 短期特許とは、香港特許庁に直接出願し、方式的要件についてのみ審査され付与される特許をいう。新規性等の実体審査は行われない。
 改正法では、特許権者または正当な関心を有する第三者が登録後実体審査を請求することができる。
 このような請求は、短期特許についての権利行使をするための前提条件となる。
 短期特許の権利者が侵害の警告をする場合には、被疑侵害者に基本的な特許情報を提示する必要がある。


 7.1 出願及び審査の流れ

  7.1.1 出願
  ・ 出願を特許登録処に郵送又は手交により提出し、以下の事項を記載すること(特許条例 第113 条および特許規則第58条):
   ➢短期特許の付与を求める願書
   ➢明細書
   ➢英語と中国語の両方による要約書
   ➢英語と中国語の両方による発明の名称
   ➢発明についての調査報告
   ➢発明の新規性を損なわない開示の主張を望む場合は、その主張を支持する陳述書及び証拠
   ➢先の出願の優先権の利用を望む場合は、優先権陳述書及び先の出願の謄本
   ➢該当する場合は、短期特許付与の延期請求
   ➢発明がその実施のために微生物の使用を必要とする場合は、当該微生物の試料を公衆が利用できる可能性に関する情報
   ➢出願人の氏名および住所
   ➢発明者の氏名および住所
   ➢出願人が発明者でない場合は、出願人がどのような方法で発明の短期特許を出願する権利を得たかを示す所定の様式による陳述書を
   含まなければならない

   ➢香港内の送達住所
   ➢所定の文書および情報の翻訳
  ・ 2019年改正後の短期特許制度では、二つ目の独立クレームを出すことが許される。
   即ち、出願人は一つ以上の種類の要求項(例えば、物クレーム及び方法クレーム)を取得することができる。
  ・ 出願手数料及び公開手数料は、出願書類の何れかの部分の登録官に対する最先の提出後1 月以内に納付すること(特許条例第113条5項)。
    国際出願
    短期特許は、国際出願が中華人民共和国において国際出願が国内段階へ入った後6 月以内、又は、中国国家知識産権局において国内段階に
   移行した旨を記載した国家知的所有権庁による庁通知の発出日後6 月以内に出願しなければならない(特許条例第125条、特許規則第78条)。


 7.1.2 方式審査

  短期特許出願に出願日を付与する目的で、登録官は、最低限の申請要件を遵守しているか審査する。
 不備がある場合には、出願人は指定された期間内に補正する(特許条例第114条、115条、特許規則第67条、68条)。


 7.1.3 承認・公示

  方式要件が満たされている場合、登録官は、当該発明に対する短期特許を付与する。登録官は、短期特許の明細書、所有権者および発明者を公告し、
 特許証を交付し、官報に公示する(特許条例第118条 )。


 7.1.4 特許付与後実体審査

  ・ 短期特許権利者、または正当な理由、あるいは正当な事業上の利益を有する第三者は特許の実体審査を遂行するよう登録官に請求することができる。
  当該請求は所定の様式、所定の手数料の支払いと共に行うこと(特許条例第127B条)。

  ・ 審査を経て、特許の有効性が確認されるとき、登録官は実体審査証明書(certificate of substantive examination)を発行する
  (特許条例第127F条)。
  一方、当該特許の有効性が確認されないとき、登録官は、短期特許を取り消す(特許条例第127G条)。

  ・ 実体審査請求を提出後に取り下げることは不可能である。そのため、権利者はまず自分で現在の、または補正される特許の有効性について確認する必要がある。

 7.1.5 更新

  短期特許は特許出願日に始まる8 年の期間の終了まで有効に存続する。
  当該特許出願日から4 年次の満了後,更に4 年間短期特許の有効な存続を望む場合は、所定の更新手数料を当該4 年次の満了時に終了す

る3 月以内に納付するものとする。更新手数料が納付されない場合は,当該4 年次の満了時に短期特許は効力を停止する(特許条例第126条)。



8.職務発明

 従業者の発明は、次の場合に使用者に属するものとみなされる。
  (a) 従業者の通常の職務遂行の過程において又は通常の職務外であるがその者に特に委ねられている職務遂行の過程において行われ、かつ、
    何れの場合にも職務遂行の結果として発明が合理的に期待されるような事情があるとき、又は

  (b) 当該発明が従業者の職務遂行過程において行われ、その発明時、従業者の職務の内容及びその職務の内容に由来する特段の責任のため、

     従業者が使用者の事業利益を促進する特別の義務を負っていたとき
 それ以外の従業者による発明はすべてその従業者に帰属するものとする(特許条例57条)。



9.補正

  9.1 標準特許(確認特許)(R) の場合
  出願人は、標準特許(確認特許)(R)が付与される前のいつでも、所定の条件に従って、自らの自由意志で出願を補正することができる。
 ただし、発明の名称、要約、優先権主張、請求、記載又は図面は、出願が公開されて、又は、対応する指定特許出願に当該補正がなされていない限り、
 補正することができない(特許条例第31条)。

  補正は、所定の様式により、補正案とその理由を明記し、登録官へ申請する(特許規則第27条)。該当する場合には、対応指定特許出願に対してなされる
 補正の認証謄本も提出しなければならない(特許規則27条2項b号)。


 9.2 標準特許(原授標準特許)(O)の場合

  出願人は標準特許(原授標準特許)(O)が付与される前、提出された出願において開示された主題を超える範囲で明細書及び要約を補正することができる(特許条例第37ZA 条、第103 条2項)。
  なお、出願人は、
  (a)実体審査請求の提出時に
  (b) 次のもの、すなわち、
    (i)  審査通知に対する応答
    (ii)  更なる審査通知に対する応答
    (iii) 再審査請求
    (iv) 再審査見解書に対する応答、又は
    (v)  更なる再審査見解書に対する応答を登録官に提出する時に
  (c) 実体審査請求の提出に基づいて出願の補正請求が提出されているか否かを問わず、出願の公開の準備が完了する前に1 回、及び
  (d) 出願の実体審査請求及び所定の手数料を受領した旨の通知の日後3 月以内に
    出願の補正を請求することができる(特許規則31ZT条2項)。
 標準特許(原授標準特許)(O)の補正申請は、出願にある明細書に含まれている陳述、主張、または図面の補正を請求する場合、請求される補正が組み込まれた無加筆の明細書の写し、及び請求される補正が組み込まれ、表示された明細書の写しの提出を要請されることがある(特許規則31ZT条3項)。

 9.3 短期特許 の場合

  短期特許は、短期特許付与前の如何なる時にも、出願人が、出願時の出願において開示された主題を拡大しない範囲内で、当該人の意志で出

願を補正することができる(特許条例第120条)。
 補正申請は所定の様式により、補正案とその理由を明記し、登録官に提出する(特許規則第75条)。



10. 優先権主張

 10.1 標準特許(確認特許)(R)の場合
  パリ条約に基づく優先権主張は、記録申請の提出時に行う。

 10.2 標準特許(原授標準特許)(O)の場合

  発明の非香港出願、又は発明の香港出願をした者、または当該人の権原承継人は、同一の発明に対する後の標準特許(原授標準特許)(O)出願をする目的で、最初の非香港出願又は香港出願の出願日後12 月の期間中、所定の条件に従うことを前提として、優先権を享受する(特許条例第37C条、(特許条例第37E条)。
  優先権主張は出願と同時に、先の出願の出願日、出願番号、先の出願がなされた国,領土又は地域が記載された優先権陳述書を登録官に提出しなければならない。
  また、主張される最先の優先日後16 月以内に、
  (a) 先の出願の写し、及び
  (b) 証明書(証明書)の写しであって、
    (i) 先の出願を受領した当局により交付され、かつ
    (ii) 先の出願の出願日を記載したもの
  を登録官に提出しなければならない(特許規則第31C条)。

 10.3 短期特許の場合

  発明の非香港出願、又は発明の香港出願をした者、または当該人の権原承継人は、同一の発明に対する後の短期特許出願をする目的で、最初の非香港出願又は香港出願の出願日後12 月の期間中、所定の条件に従うことを前提として、優先権を享受する(特許条例110条)。

 先の出願の優先権の利用を希望する短期特許出願人は、優先権陳述書及び先の出願の謄本を所定の様式で所定の期間に提出しなければならない(特許条例第111条)。


11.早期審査制度

  早期審査(優先審査)の規定はない。


12.異議申立制度

  異議申立制度はない。


13.特許付与後の明細書の訂正申請

  特許付与後、特許権者は、特許明細書の訂正を下記の機構に申請することができる(特許条例第46条1項、2項):
   ➢標準特許(確認特許)(R):裁判所
   ➢標準特許(原授標準特許)(O):登録官、或いは裁判所
   ➢実体審査証明書が発行されている短期特許:登録官、又は裁判所
    何人も、かかる特許明細書の訂正について、裁判所に異議を申立てることができる(特許条例46条10項、102 条2項)。
   ただし、以下を申立てる訂正は無効である(特許条例103条3項):

    (i)  提出された出願において開示された主題を超える範囲、又は
    (ii) 特許により与えられる保護を超える範囲。



14.特許取消

  何人も、以下を根拠として、裁判所に対し発明の特許を取り消す命令を請求することができる(特許条例第91条1項):
   ➢発明が特許性のない発明であること
   ➢当該特許が、その付与を受ける権利のない者に付与されたこと
  (但しかかる請求は特許付与から 2年以内に行わなければならず、裁判所による宣言が言渡された者又は当該特許付与の資格を有すると
   裁判所から認定された者のみが提起できる(特許条例第55条、第92 条))

   ➢明細書が、当該技術の熟練者が実施することができる程度に十分に明確かつ完全な態様で発明を開示していないこと
   ➢明細書に開示された事項が特許出願のそれを超えていること
   ➢特許の与える保護が、特許出願又は特許明細書の無効な訂正により拡張されていること
   ➢特許が同一発明に係る2 件の特許の1 件であって、同一人による同一発明であり、同一の基準日を有すること(ただし、裁判所は、
   各々の特許権者が当該人の意見を述べ、特許明細書を訂正する機会を認められない限り、取消命令を発してはならない(特許条例第92 条2項))

   ➢標準特許(確認特許)(R)の場合は、対応する指定特許が指定特許庁における所定の異議申立又は取消手続の後に取り消されたこと。
    裁判所は、当該特許の無条件取消命令を下すか、または指定期間内に補正明細書が提出されない場合には当該特許を取消すとの命令を

   出しつつ、限定範囲でのみ無効にすることができる(特許条例第91条2項)。



15.登録官に対する上訴

  特許条例に基づくに基づく登録官の決定又は命令に対し裁判所に上訴をすることができる。また、登録官による裁量権の行使も含まれる
  (特許条例第103条)。

  香港高等法院は、不服を審理する管轄権を有する。当事者は、登録官の当該決定の日、又は登録官の理由書の交付の日から 28 日以内に
 第一審裁判所である香港高等法院に不服を申し立てることができる(高等裁判所規則第55号命令4項2号)。




16.特許権の行使と侵害

 特許権者は、差止命令、損害賠償、不当利得および申告などの救済を請求するために、侵害行為に関する民事訴訟を裁判所に提起することができる
 (特許条例第80条)。

 ただし、特許侵害訴訟において、侵害行為の時点では特許の存在を知らず、特許の存在を推定する正当な理由も有していなかった旨の証明をする

 被告を相手としては、損害賠償は裁定されず、利益計算の命令も発せられない可能性がある(特許条例第81条)。



17. 特許権の存続期間

  17.1 標準特許
   特許の存続期間は、標準特許(確認特許)(R)の場合、みなし出願日(対応する指定特許の出願日)から20年であり、標準特許(原授標準特許)(O)の場合、出願日から20年である。ただし、特許は3年目の終了後、毎年更新する必要がある(特許条例第39条)。
 
  17.2 短期特許の存続期間

  短期特許の場合、特許の存続期間は、特許出願日から8年である。ただし、特許を有効に保つためには、4年目の満了前に一度更新する必要がある
 (特許条例第126条)。
  17.3 特許件存続期間の延長
  特許権の存続期間を延長する制度はない。

  17.4 審査の遅れによる期間の延長補償
  審査の遅れによる期間の延長補償制度はない。




18.出願及び更新に関する料金(最新の料金については香港知識産権署のウェブサイト等で確認のこと)

  18.1 標準特許(確認特許)(R)間  50(20年期内の1~0年目)

 18.2 標準特許(原授標準特許)(O)

 18.3 短期特許

19.  加盟している条約
  パリ条約、PCT、WTO協定