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日本 2022年 4月 1日 改正法施行

2022年 4月 1日
浅村特許事務所 知財情報


日本 2022 41 改正法施行


 

  


2022年 4月 1日に、多くの特許法他の法改正が施行されました。

 

以下にまとめましたので、ご確認下さい。

 

1.特許法等の一部を改正する法律

  1.1 特許庁出願窓口でのクレジットカード払い

 これまでオンライン手続に限定していた「クレジットカード納付(指定立替納付)」は、特許庁出願窓口でも納付することが可能になりました。
 特許庁に来訪し、窓口において利用者のクレジットカードを用いて、必要な手数料額の決済・納付を行います。
 利用できるクレジットカードは、VISA、MasterCard、JCB、American Expressとなります。

(特許庁 特許庁窓口でクレジットカード納付を開始します より抜粋)

詳しくは、特許庁窓口でクレジットカード納付を開始します | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp) を参照ください。

 

  1.2 放棄、訂正審判、訂正請求における通常実施権者の承諾の要件の見直し(特許法、実用新案法、意匠法)

 ① 特許権の放棄には、通常実施権者の承諾が不要

なお、特許権の放棄についての専用実施権者及び質権者の承諾については、承諾が必要です。
また、専用実施権の放棄、仮専用実施権の放棄の要否については、引き続き承諾が必要です。
実用新案登録に基づく特許出願における通常実施権者の承諾(仮専用実施権の放棄については仮通常実施権者の承諾)の要否についても、引き続き承諾が必要です。

 ② 訂正審判の請求を行う場合、特許異議の申立て又は特許無効審判の手続の中で訂正の請求を行う場合には、通常実施権者の承諾が不要

なお、専用実施権者及び質権者の承諾は、引き続き必要となります。

   ③ 実用新案法

実用新案権の放棄及び訂正における通常実施権者の承諾は、不要となりました。
専用実施権者及び質権者の承諾については、引き続き承諾を必要なります。

   ④ 意匠法

意匠権の放棄における通常実施権者の承諾は、不要となりました。
専用実施権者及び質権者の承諾については、引き続き承諾を必要となります。

   ⑤ 商標法

商標権の放棄については、引き続き通常使用権者等の承諾が必要となります。

 

(産業構造審議会 特許制度小委員会:ウィズコロナ/ポストコロナ時代における特許制度の在り方(案)より抜粋)

 

1.3 特許権侵害訴訟等における第三者意見募集制度の創設(特許法、実用新案法)

 AI・IoT技術の時代において、特許権侵害訴訟はこれまで以上に高度化・複雑化することが想定されます。
 そのため、裁判官が必要に応じてより幅広い意見を参考にした判断を行うことができるよう、当事者の申立てにより裁判所が必要と認めるときに限り、法曹界、学会、業界/団体、海外の団体や企業等の第三者の意見募集ができる制度を導入しました。

 

(1)導入対象法域

まずは、必要性の高い特許権と実用新案権の侵害訴訟に導入されました。
その他の分野(意匠権、商標権等)、訴訟類型(審決取消訴訟等)については、将来必要があれば広げていくこととし、今回は導入を行っていません。

(2)対象とする審級

知財高裁、および第1審の専属管轄を有する東京地裁、大阪地裁が対象となります。

 第三者意見募集制度について 知的財産高等裁判所ウェブサイト 

 ( https://www.ip.courts.go.jp/tetuduki/vcmsFolder_1615/vcms_1615.html

 

(3)特許法では、補償金請求権訴訟にも導入します

(4)裁判所による第三者意見募集制度に関する弁理士の対応業務の追加

意見を提出しようとする企業等の第三者が意見の内容について検討を行う際に、弁理士への相談を通じて弁理士の知識や知見を活用できるようにすることは、当該第三者の意見を正確に裁判所に伝える上で有益であると考えられます。
そのため、上記意見を提出しようとする企業等の第三者が意見の内容について検討を行う際に、弁理士への相談を通じて弁理士の知識や知見を活用できるようにしたものです。

 

【イメージ】

(産業構造審議会 第15回知的財産分科会より引用)

 

 

 

1.4 特許料等の改訂                 

主な料金の種類と性質(赤字は法定上限の改訂を行う料金)   

(産業構造審議会 第15回知的財産分科会より引用)

 

 

   特 許

項 目

改定前金額

改定後金額

参考:請求項数5つの場合の特許料(1年分)

改定前

改定後

(値上げ額)

特許料
1
年~3

毎年 2,100円

請求項の数×200円

毎年 4,300

請求項の数×300

3,100円

5,800
2,700円)

特許料
4
年~6

毎年 6,400円

請求項の数×500円

毎年 10,300

請求項の数×800

8,900円

14,300

5,400円)

特許料
7
年~9

毎年 19,300円

請求項の数×1,500円

毎年 24,800

請求項の数×1,900

26,800円

34,300

7,500円)

特許料
10
年~25

毎年 55,400円

請求項の数×4,300円

毎年 59,400

請求項の数×4,600

76,900円

82,400

5,500円)

 

 

   商 標

項 目

改定前金額

改定後金額

商標登録料

区分数×28,200円

区分数×32,900円

更新登録申請

区分数×38,800円

区分数×43,600円

 

 

   国際出願(特許、実用新案)関係手数料

項 目

改定前金額

改定後金額

送付手数料+調査手数料

日本語

計 80,000円

送付手数料 10,000円

調査手数料 70,000円

計 160,000

送付手数料 17,000

調査手数料 143,000

英語

計 166,000円

送付手数料 10,000円

調査手数料 156,000円

計 186,000

送付手数料 17,000

調査手数料 169,000

国際調査の追加手数料

日本語

60,000円
×
請求の範囲の発明の数-1

105,000
×
請求の範囲の発明の数-1

英語

126,000円
×
請求の範囲の発明の数-1

168,000
×
請求の範囲の発明の数-1

予備審査手数料

日本語

26,000円

34,000

英語

58,000円

69,000

予備審査の追加手数料

日本語

15,000円
×
請求の範囲の発明の数-1

28,000
×
請求の範囲の発明の数-1

英語

34,000円
×
請求の範囲の発明の数-1

45,000
×
請求の範囲の発明の数-1

 

 

1.5 弁理士制度の見直し

(1)農林水産知財業務の弁理士業務への追加

育成者権及び 地理的表示 (GI) に関する業務を弁理士法上に規定し、当該業務を弁理士が扱えるということを明確化しました。
なお、顕在的なユーザーニーズが認められる、「海外出願支援業務」と「相談業務」についてのみ弁理士が業務を行うことができます。
なお、「国内出願支援業務(品種登録出願業務)」は、弁理士業務ではありません。
出願には種苗自体の提出が重要であり、書類の記載内容は書誌的事項が中心であるため、行政書士の業務であることが確認されたためです。

 

(2)弁理士が設立する法人の名称を、「特許業務法人」から「弁理士法人」に変更

特許、意匠、商標の出願代理業務に加え、知的財産に関するコンサルティング業務や営業秘密、データに係る不正競争防止法関連業務等の増加に伴い、「特許業務法人」の文字を使用することで弁理士の業務範囲をユーザーが誤認するおそれが高くなっていました。
また、他士業においても、公認会計士を除き多くの士業において、法人名称と士業名称が一致している状況でした。

(産業構造審議会 15回知的財産分科会より引用)

そのため、法人名称を「特許業務法人」から「弁理士法人」に変更する改正が行われました。
法人名称の変更期間は、2022年 4月1日から2023年 3月31日迄となります。
なおこの期間内に、法人化している弁理士事務所が「特許業務法人」から「弁理士法人」へ名称を変更しない場合、その事務所は解散したものとみなされますので、この間に名称を変更しなければなりません。

 

(3)一人法人制度の導入

改正前は、弁理士の所属する法人の設立・存続には、二名以上の弁理士社員が必要とされてきました。
しなしながら、特許業務法人の社員は無限責任を負わなければならないことから弁理士が社員になることを拒み、その結果、二人以上の弁理士社員を確保することができずに、法人化できない弁理士事務所が一定数存在しています。
また、法人化されていない弁理士事務所において、弁理士が急遽業務を行えなくなった場合、当該弁理士の個人資産と事業資産の分離がなされていないこと、個人契約の引継ぎ処理が必要となることから、当該事務所の事業承継を円滑に進まず、ユーザーの利便を損なう事例が存在していました。
そのため、事業承継の円滑化とユーザーへの継続的な対応のため、弁理士の社員が一人のみでも法人の設立・存続を可能とする制度が導入されました。

 

2.マルチマルチクレームの制限

2022年 4月 1日以降の特許出願、実用新案登録出願において、国際的調和、第三者の監視負担及び過度な審査負担を軽減する観点から、日本においてもマルチマルチクレームの記載が認められなくなりました。

詳細は、日本 マルチマルチクレームを制限 (asamura.jp)をご覧下さい。

 

3.EPO料金改定

2022年 4月 1日に料金(Official fee)が改定されました(5%程度の値上げ)。

詳細は、EPO 料金改定 2022年 4月 (asamura.jp)をご覧ください。