2022年 2月28日
浅村特許事務所 知財情報
日本 マルチマルチクレームを制限
2022年 4月以降の特許出願、実用新案登録出願において、マルチマルチクレームの記載が認められなくなります。
国際的調和、第三者の監視負担及び過度な審査負担を軽減する観点から、マルチマルチクレームの記載を制限するため、特許法施行規則及び実用新案法施行規則の改正が行われます。
この施行規則の一部を改正する省令は、2022年 2月25日に公布され、2022年 4月 1日に施行されます。
したがって、2022年 4月 1日以降に行う特許出願、実用新案登録出願には、マルチマルチクレームの記載が認められません。
1.マルチマルチクレーム記載が認められる場合
2022年 3月31日までに行った特許出願、実用新案登録出願
出願日が2022年 3月31日以前に遡及する分割出願等
国際出願日が2022年 3月31日以前であるPCT出願であって、2022年 4月 1日以降に日本に国内段階に移行する場合
2.マルチマルチクレーム記載が認められる場合
優先日が2022年 3月31日以前であるが、出願日が2022年 4月 1日以降となる優先権主張を伴う出願
3.特許出願の運用
(1)審査官は、特許請求の範囲(クレーム)にマルチマルチクレームの記載が含まれているか否かを確認する。
(2)審査官は、マルチマルチクレームの記載が含まれていると判断した場合には、特許法第 36 条 6 項 4 号違反の拒絶理由を出願人に通知する。
① マルチマルチクレームに係る請求項については、マルチマルチクレームに係る要件以外の要件については審査対象とされない。
なお、マルチマルチクレームを引用する請求項についても、マルチマルチクレームに係る要件以外の要件は審査対象とされない。
② 発明の単一性の判断
マルチマルチクレーム及びマルチマルチクレームを引用するクレームは、発明の単一性の要件(特許法第 37 条)の判断が行われず、当該クレーム以外のクレームのみ発明の単一性が判断される。
(3)補正後の運用
出願人がマルチマルチクレーム違反を解消する補正を行い、その結果、マルチマルチ記載違反が解消された場合、審査官はマルチマルチクレームの要件以外の要件について審査を行う。
この審査によって新たな拒絶理由があると認められたに場合は、最後の拒絶理由通知が行われる。
4.実用新案登録出願の運用
実用新案についても、実用新案法第 5 条 6 項 4 号で委任する実用新案法施行規則第 4 条に、新たに 5 号が設けられ、マルチマルチクレームが制限される。
(1)審査官は、実用新案登録請求の範囲(クレーム)にマルチマルチクレームが含まれているか否かを確認する。
(2)審査官は、マルチマルチクレームの記載が含まれていると判断した場合、出願に対し基礎的要件を満たしていないとする補正命令を命ずる(実 6 条の 2 第 3 号、実 5 条 6 項 4 号)。
5.無効理由、異議理由とはならない
マルチマルチクレーム記載違反は、異議理由、無効理由とはならない(異議・無効理由から36 条 6 項 4 号は除かれている(特 113条 4 号、特 123 条 1 項 4 号)(実 37 条 1 項 4 号)。
6.簡易マルチマルチクレーム検出ツールの提供
特許庁より、マルチマルチクレーム検出ツールが提供された。
簡易マルチマルチクレームチェッカーVer.1のダウンロード(ZIP:5KB)
ダウンロード後、「multimultichecker_ver_1_0.html」ファイルを実行する。