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日本 「特許法等の一部を改正する法律」

2023年 1月26日
浅村特許事務所 知財情報


日本 「特許法等の一部を改正する法律」


 

「特許法等の一部を改正する法律案」は、第204回通常国会において、2021年 5月14日に可決・成立し、2021年 5月21日に法律第42号として公布されました。

 同年 9月14日には、「特許法等の一部を改正する法律」の施行期日を定める政令が、閣議決定されました。

 改正項目ごとの具体的な期日が確定しましたので、再編しました。下記をご確認下さい。

 

特許法等の一部を改正する法律

1.特許権等の回復要件の緩和

(施行日 2023年 4月 1日)

 手続の回復について、現在は「正当な理由」を厳格に解して運用されています。この運用は、相当な注意基準を採用する国において60%以上の認容率であるのに対し、日本は10~20%程度と突出して低く、各国主要国の産業財産制度と比べて厳格すぎるとの指摘がありました。また、各国で権利化を図る場合、我が国のみ十分な権利の保護がなされない事態も想定されます。
 そのため、認容率の向上、申請者の負担軽減、及び回復申請の予見性向上のため、現行の「相当な注意」を求める法制から、「期間徒過が故意でないと認められる場合には、権利を回復できる」とする法制に改正するものです。

権利回復制度の日米欧の比較

(産業構造審議会 第15回知的財産分科会より引用)

 対象となる手続きは、以下の通りです。

(1)外国語書面出願の翻訳文(特許法)

 外国語書面出願において、外国語書面、外国語要約書面の翻訳文を所定の期間内に提出することができなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定の期間に限り翻訳文を提出できる(特36条の2⑥)。

(2)外国語でされた国際特許出願の翻訳文(特許法、実用新案法)

 外国語でされた国際特許出願において、明細書等の翻訳文、図面及び要約の翻訳文を所定の期間内に提出することができなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定の期間に限り翻訳文を提出できる(特184条の4④、実48条の4④)。

(3)特許出願等に基づく優先権主張、パリ条約の例による優先権主張(特許法、実用新案法、意匠法)

 優先権主張を伴う特許出願において、優先期間内に特許出願をすることができなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定の期間に限り特許出願等に基づく優先権主張、パリ条約の例による優先権主張することができる(特41条①1,特43条の2①、特43条の3③、実8条①1、実11条①で準用する特43条の2①、特43条の3③、意15条①で準用する特43条の2①、特43条の3③)。

(4)出願審査の請求(特許法)

 特許出願審査請求において、その請求期間内に請求をすることができなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定の期間に限り当該請求をすることができる(特48条の3⑤)。

(5)特許料等の追納による特許権の回復(特許法、実用新案法、意匠法)

 特許料等の追納において、所定期間内に当該追納をすることができなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定の期間に限り当該追納をすることができる(特112条の2①、実33条の2①、意44条の2①)

【特許料の追納に係る権利回復の例】


(産業構造審議会 第15回知的財産分科会より引用)

(6)商標権等の回復要件の緩和(商標法)

 ① 商標権の回復
 商標権の存続期間の満了前6月から満了の日までの期間内に商標権の存続期間の更新ができなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定期間内に限りその申請をすることができる。(商21条①)。

 ② 後期分割登録料等の追納による商標権の回復
 商標権の満了前5年を経過後6か月以内に後期分割登録料及び割増登録料を追納することができなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定の期間内に限り後期分割登録料及び割増登録料を追納することができる(商41条の3①)。

 ③ 防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録出願
 防護標章登録に基づく権利の存続期間の満了前6月から満了日までの間に更新登録の出願をできなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定の期間内に限り更新登録の出願をすることができる(商65条の3③)。

 ④ 書換登録の申請
 書換登録の申請期間内にその申請ができなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定の期間内に限り書換登録の申請をすることができる(商附則3条③)。

(7)在外者の特許管理人の特例(特許法、実用新案法)

 国際特許出願における特許管理人の選任の届出において、所定期間内に届出をすることができなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定の期間に限り当該届出をすることができる(特184条の11⑥、実48条の15②で準用する特184条の11⑥)。

表 権利の回復制度の対象手続一覧

(産業構造審議会 特許制度小委員会:ウィズコロナ/ポストコロナ時代における特許制度の在り方(案)より抜粋)

詳しくは、当所知財情報「日本 特許権等の回復要件の緩和(施行日 2023年 4月 1日)」を参照ください。


2.特許権侵害訴訟等における第三者意見募集制度の創設(特許法、実用新案法)

(施行日 2022年 4月 1日)

 AI・IoT 技術の時代において、特許権侵害訴訟はこれまで以上に高度化・複雑化することが想定されます。
 そのため、裁判官が必要に応じてより幅広い意見を参考にした判断を行うことができるよう、当事者の申立てにより裁判所が必要と認めるときに限り、法曹界、学会、業界/団体、海外の団体や企業等の第三者の意見募集ができる制度を導入したものです(特105条の2の11、実30条で準用する特105条の2の11)。

(1)導入対象法域

 まずは、必要性の高い特許権と実用新案権の侵害訴訟に導入されました。
 その他の分野(意匠権、商標権等)、訴訟類型(審決取消訴訟等)については、将来必要があれば広げていくこととし、今回の改正では導入されていません。

(2)対象とする審級

 知財高裁、および第1審の専属管轄を有する東京地裁、大阪地裁が対象となります。

(3)特許法では、補償金請求権訴訟にも導入します(特65で準用する特105条の2の11

【イメージ】

(産業構造審議会 第15回知的財産分科会より引用)

【制度の概要】

(産業構造審議会 第15回知的財産分科会より引用)

 

3.審判等の口頭審理期日における当事者の出頭のオンライン化(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)

(施行日 2021年10月 1日)

 当事者及び参加人が、新型コロナウイルス感染症に対する不安を持つことなく口頭審理に参加できるようにとの観点及びデジタル化等の社会構造の変化に対応し、ユーザーの利便性を向上させる観点から導入されたものです。

 審判長の判断でウェブ会議システム等を用いることにより、当事者及び参加人が法廷に実際に出頭することなく、口頭審理、証拠調べ、証拠保全の期日における手続を行うことができるようにする(口頭審理:特145条⑥⑦、判定制度:71条③で準用、証拠調べ証拠保全:特151条で準用)。

【ウェブ会議システムを利用した口頭審理のイメージ】

(産業構造審議会 第15回知的財産分科会より引用)



4.放棄、訂正審判、訂正請求における通常実施権者の承諾の要件の見直し(特許法、実用新案法、意匠法)

(施行日 2022年 4月 1日)

 通常実施権者が増加・多様化したことにより、特許権者が訂正審判等において全ての通常実施権者の承諾を得ることが現実的に困難となっていること、海外制度との調和を図る必要があること、通常実施権者が訂正審判の請求等を承諾しないことによって、特許権者の防御手段を実質的に無効化することができるということは、特許権者の保護を欠くことから、以下の改正が行われました。

(1)特許権の放棄には、通常実施権者の承諾を不要とする(特97)。

 なお、特許権の放棄についての専用実施権者及び質権者の承諾については、引き続き承諾が必要となります。
 また、専用実施権の放棄、仮専用実施権の放棄及び実用新案登録に基づく特許出願における通常実施権者の承諾(仮専用実施権の放棄については仮通常実施権者の承諾)の要否については、引き続きユーザーニーズ等を踏まえて改正の必要性を検討することに留まりましたので、引き続き承諾が必要となります。

(2)訂正審判の請求、特許異議の申立て又は特許無効審判の手続の中で行う訂正の請求を行う場合には、通常実施権者の承諾を不要とする(特127、同条を準用する特第120条の5、特127を準用する特134 条の2 )。
 専用実施権者及び質権者の承諾は、引き続き必要となります。

【パテントプールによる特許権のライセンスのイメージ】

(産業構造審議会 第15回知的財産分科会より引用)

改正法では、特許権の範囲の訂正等に際して、通常実施権者A~Eの承諾の必要はありません。

 

(産業構造審議会 特許制度小委員会:ウィズコロナ/ポストコロナ時代における特許制度の在り方(案)より抜粋)

(3)実用新案法(放棄:実26条で準用する特97、訂正:実14条の2で準用する特127

 実用新案権の放棄及び訂正における通常実施権者の承諾は、不要となりました。
 専用実施権者及び質権者の承諾については、引き続き承諾を必要とします。

(4)意匠法(放棄:意36条で準用する特97

 意匠権の放棄における通常実施権者の承諾は、不要となりました。
 専用実施権者及び質権者の承諾については、引き続き承諾を必要とします。

(5)商標法

 通常使用権者の承諾なく商標権が放棄され、誰もがその商標を使用できる状態になった場合には、これまで商標を使用してきた通常使用権者の信用が毀損されるおそれや、商品・役務の出所について混同を生ずるおそれがあります。また、これにより需要者の利益が害されるおそれもあります。
 また、特許権が放棄された場合には、当該特許に係る技術はいわゆるパブリックドメインとなることから、通常実施権者による実施の継続は妨げられませんが、商標権が放棄された場合には、その後、同一・類似の商標について他者が権利を取得することが可能になり、通常使用権者が差止め等の請求を受ける可能性もあります。
 そのため、商標権の放棄については、引き続き通常使用権者等の承諾を必要とし、商標法の改正は行なわれません。


5.特許料等の改訂(特許法、実用新案法、意匠法、商標法、特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律)

(施行日 2022年 4月 1日)

 特許庁の審査負担増大や手続きのデジタル化に対応し、また、収支のバランスの確保を図るため、料金体系を見直したものです。

 特許料等の上限額を法定し、具体的な金額は政令で定めることとする
  (登録料:特107条①、実31条①、意42条①、商40条①②
  国際意匠登録出願の個別指定手数料:意60条の21①、②
  商標登録料の分割納付:商41条の2①⑦
  防護標章登録料:商65条の7①②
  国際登録に基づく商標権の個別手数料:商68条の30①1、2
  更新手数料:商68条の30⑤)。

主な料金の種類と性質(赤字は法定上限の改訂を行う料金)

(産業構造審議会 第15回知的財産分科会より引用)


6.追納の際の割増特許料等の納付免除(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)

(施行日 2021年10月 1日)

 追納は、第4年以降の特許料の納付を怠った場合に直ちにその特許権が消滅することはあまりに酷であり、相当額の割増料金を徴収することによって、その特許料の納付を怠ったことの効果を免じようとするものです。なお、実用新案法、意匠法、商標法においても、特許法と同様に追納に係る規定を設けています。
 今般の新型コロナウイルスの感染拡大により、特許料を納付期間内に支払うことができない場合は、特許権者からはやむを得ない事情である限り、「特許料の納付を怠った」とは言えません。納付期間を徒過した場合に必ず割増手数料を支払う必要があるとする現行制度は不合理であることから、やむを得ない事情で追納における納付期間を徒過した場合には、追納の際の割増特許料の納付を免除することとしました。

 災害の発生、新型コロナウイルスの感染拡大等の事情など、特許権者の責めに帰することができない理由により、追納における納付期間を徒過した場合には、割増特許料の納付を不要とする(通常の特許料の納付だけで済む)(特112条②④⑤⑥)、実33条②④⑤、意44条②④、商41条の2⑥、商43条①②③)。

(産業構造審議会 第15回知的財産分科会より引用)


7.海外からの模倣品流入への規制強化(意匠法、商標法)

(施行日 2022年10月 1日)

 模倣品の海外から日本国内に持ち込む場合において、国内に輸入事業者や販売事業者を有する場合には、当該事業者による模倣品の「輸入」が産業財産権の侵害となるため、税関で模倣品を侵害物品として没収等をすることが可能です。
 しかしながら最近は、国内の事業者無しに、すなわち海外の事業者が国内の者に対して、少量の模倣品を郵送等によって直接販売や送付する取引が急増しています。この場合、「輸入」の主体は国内の個人ですので、「業として」の実施の定義・使用の定義要件を満たさない場合には産業財産権の侵害とならず、税関で模倣品を没収等することができませんでした。
 特に意匠権、商標権に関して、近年、このような模倣品の個人使用目的の輸入が急増しており、模倣品の国内への流入増加に歯止めをかけることができない状況にありました。
 
 そのため、海外の事業者が国内の者に模倣品を直接送付する場合について、日本国内に到達する時点以降を捉えて、新たに意匠権侵害行為、商標権侵害行為と位置づけるための改正が行われました。

(1)意匠の実施の定義の見直し

 意匠の実施の定義に定める「輸入」に、外国にある者が外国から日本国内に他人をして(郵送業者等の自分以外の他人によって)持ち込ませる行為を含むものとする(意2条②1)。

(2)商標の使用の定義の見直し

 商標の使用の定義に定める「輸入」に、外国にある者が外国から日本国内に他人をして(郵送業者等の自分以外の他人によって)持ち込ませる行為を含むものとする(商2条⑦)。

 

(産業構造審議会 第15回知的財産分科会より引用)

 

8.国際意匠登録出願における新規性喪失の例外適用証明書の提出方法の拡充

(施行日 2021年10月 1日)

 国際出願の出願人は願書をWIPO国際事務局に提出しますが、国際意匠登録出願における新規性喪失の例外適用証明書は、国際登録の日から原則6月後である国際公表の日から、一定期間内に日本国特許庁長官に宛てて提出することとなります。その際、願書と証明書の提出時期や提出先の違いに起因して、出願人が特許庁への各証明書の提出を失念し、結果として新規性喪失の例外の規定の適用を受けることができないといった事態が生じていました。
 そのため、出願人が国際出願時に、オンライン又は郵送のいずれかの方法により、例外適用証明書をWIPO国際事務局に提出することを可能とする改正が行われました。

 国際意匠登録出願の出願人が、新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書を、意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定に定める国際事務局に提出することができる(意60条の7②)。

【改正前】

 

【改正後】

(産業構造審議会 第15回知的財産分科会より引用)

 

9.国際意匠・商標の登録出願に係る登録査定の謄本送達の見直し(意匠法、商標法)

(意匠法 施行日 2021年10月 1日)

(商標法 施行日 2023年  4月 1日)

 
 
 従来、特許庁は海外出願人に対し、
① 国内法に基づき、海外出願人宛ての登録査定の謄本を国際郵便で送達し、また、
② ハーグ協定(意匠)もしくはマドリッド協定議定書(商標)に基づき、設定登録予定日を記載した保護を付与する旨の声明を設定登録前にWIPO国際事務局に電子データで通知し、
登録査定謄本の送達の完了を待って、権利を付与していました。

 しかしながら、新型コロナウイルス感染症の世界的流行という緊急事態により、一部の国について国際郵便の引受が停止され、意匠又は商標の国際登録出願の登録査定の謄本を国際郵便での送達(①)ができない事例が発生しました。また、設定登録には国内法上、登録査定の謄本送達が不可欠としているため、送達が遅れると権利を付与できず、その結果、海外出願人に不利益が生じました。

 そのため、WIPOの国際事務局に対し、海外出願人宛ての登録査定の謄本と、設定登録予定日を記載した保護を付与する旨の声明を、電子データで一本化して通知することができることとしました。
 かかる法改正により、外国出願人の利便性の向上につなげるものです。

 国際意匠登録出願の査定の方式について、特許庁長官が意匠登録をすべき旨の査定に記載されている事項を、意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定に定める国際事務局を経由して国際登録の名義人に通知することをもって、意匠登録をすべき旨の査定の謄本の送達に代えることができる(意60条の12の2①)。

 国際商標登録出願の査定の方式について、特許庁長官が商標登録をすべき旨の査定に記載されている事項を、標章の国際出願に関するマドリッド協定の議定書に定める国際事務局を経由して国際登録の名義人に通知することをもって、商標登録をすべき旨の査定の謄本の送達に代えることができる(商68条の18の2①)。

 

【改正前】

【改正後】

(産業構造審議会 第15回知的財産分科会より引用)

 

10.国際商標登録出願に係る個別手数料の二段階納付から一括納付への変更(商標法)

(施行日 2023年 4月 1日)


  標章の国際登録に関するマドリッド協定議定書(以下「議定書」という。)上、国際登録を受けるにあたっては、下記の①を原則としますが、②を宣言することもできます。

①「基本手数料」、指定区分数に応じた「追加手数料」、及び指定国数に応じた「付加手数料」を徴収する(議定書第8条(2))。

②「基本手数料」及び「個別手数料」の受領を宣言することができ(議定書第 8 条(7))、また、「個別手数料」は、「出願時」及び「締約国の法令に従って定められる後の日付」の二段階に分けて徴収することができる(議定書に基づく規則第34規則(3)(a))。
 日本は、②の「個別手数料」の受領を宣言し、これをWIPO国際事務局への出願時及び日本での設定登録時の二段階に分けて徴収する二段階納付を採用しています(商標法第68条の30②)。


 日本は二段階納付を採用していることにより、以下の課題が生じています。

(a)日本国内の商標権設定登録時に、二度目の納付手続が必要であるため、海外の出願人にとって追加的な手続負担となっている。

(b)個別手数料について、議定書の締約国では国際標準の一括納付を採る国が多く、海外の出願人が慣れない二段階目の納付手続をし損なうことがあり、その結果、出願がみなし取下げとなる事例が多数発生している。

(c)WIPO国際事務局において、二段階納付のための事務負担が生じている。


 以上の課題を解決するため、国際商標登録出願に係る個別手数料の納付方法について、二段階納付から一括納付(国際標準に合わせ、拒絶査定の場合も個別手数料の返還請求制度は設けない一括納付)に変更されます

 国際商標登録出願の個別手数料を、国際登録前に国際事務局にまとめて納付しなければならない(商68条の19①、商68条の30各号、商68条の35)。

【改正前】

【改正後】

(産業構造審議会 第15回知的財産分科会より引用)

 

 

11.予納の見直し等

(施行日 銀行振り込みによる予納(現金による予納)開始           : 2021年10月 1日)

(窓口でのクレジットカード払い 開始                    : 2022年 4月 1日)

(インターネット出願ソフトを利用した予納(電子現金による予納)開始 :2023年 1月)

(特許印紙による予納の廃止                            :2023年3月31日)

 特許印紙による予納制度については、物理的な印紙の取扱いに係るユーザーや特許庁双方の負担軽減の観点から廃止されます。
 

 特許料等又は手数料の予納は特許印紙ではなく、現金をもってしなければならない(工業所有権に関する手続等の特例に関する法律第14条①②、第15条各項、16条)。

【特許庁への支払い手段と金額構成(令和元年度)】
(産業構造審議会 第15回知的財産分科会より引用)

 

12.法人制度の見直し

(施行日 2022年 4月 1日)

(1)弁理士が設立する法人の名称を、「特許業務法人」から「弁理士法人」に変更する(弁理士法等)

 平成12年の弁理士法改正において、ユーザーへの継続的な対応と、大規模法人による総合的なサービスの提供を可能とするために、特許業務法人制度が導入されました。
 本制度の導入時には、弁理士の典型的な業務が特許に関する業務であったため、法人の名称中に「特許業務法人」の文字を使用することが義務付けられました。
 しかし、特許に関連しない弁理士業務(特許、意匠、商標の出願代理業務に加え、知的財産に関するコンサルティング業務や営業秘密、データに係る不正競争防止法関連業務等)の増加に伴い、「特許業務法人」の文字を使用することで弁理士の業務範囲をユーザーが誤認するおそれが高くなっていました。
 
また、他士業においても、公認会計士を除き多くの士業において、法人名称と士業の名称が一致している状況にありました。

(産業構造審議会 第15回知的財産分科会より引用)

 そのため、法人名称を「特許業務法人」から「弁理士法人」に変更する改正が行われました。
 なお、改正法施行日から起算して1年以内に「特許業務法人」から「弁理士法人」の名称に変更しない場合には、当該法人は解散したものとみなされます(弁理士法の一部改正に伴う経過措置第7条⑪)。
 したがって、2022年 4月 1日時点で存続する特許業務法人は、2022年 4月 1日から2023年 3月31日までの間に、弁理士法人へ名称を変更しなければなりません。

(2)一人法人制度の導入(弁理士法2条、43条、47条の3、52条各項、52条の2)

 従来、特許業務法人の設立・存続には、弁理士である社員が二人以上いることが必要とされていました。これは、ユーザーが安心して弁理士に業務を依頼できるようにする上では、社員の一人が急遽職務を行えなくなった場合でも、他の弁理士がその業務を引き継げるといった継続的な対応を担保するためでした。
 しかしながら、特許業務法人の社員は無限責任を負わなければならないことから弁理士が社員になることを拒み、二人以上の弁理士社員を確保することができず、法人化できない弁理士事務所が一定数存在していました。
 法人化されていない事務所で弁理士が急遽業務を行えなくなった場合には、当該弁理士の個人資産と事業資産の分離がなされていないことから事業承継等を円滑に進めることができず、ユーザーの利便を損なう可能性がありました。
 そのため、弁理士事務所の法人化を促進するため、弁理士一人でも法人の設立を可能とする制度が導入されました。


13.弁理士業務の追加

(施行日 2022年 4月 1日)

(1)裁判所による第三者意見募集制度に関する弁理士の対応(特許法及び実用新案法の適用に関するものに限る。)

 裁判官が必要に応じて幅広い意見を参考にして判断をすることができるようにするため、裁判所が必要と認めるときには、第三者からの意見を求めることができるようになりました。
 意見を提出しようとする企業等の第三者が意見の内容について検討を行う際に、弁理士への相談を通じて弁理士の知識や知見を活用できるようにすることは、当該第三者の意見を正確に裁判所に伝える上で有益であると考えられます。
 そのため、上記意見を提出しようとする企業等の第三者が意見の内容について検討を行う際に、弁理士への相談を通じて弁理士の知識や知見を活用できるようになりました。

 弁理士は、特許権侵害訴訟等において、裁判所が広く第三者に対して審理に必要な事項について意見を求めた際に、意見を記載した書面を提出する者からの当該意見に内容(特許法及び実用新案法の適用に関するものに限る。)に関する相談に応ずることを業とすることができる(弁理士法第4条②4)。

(2)農林水産知財業務を弁理士の業務として規定

 育成者権及び 地理的表示 (GI) に関する業務を弁理士法上に規定することにより、当該業務を弁理士が扱えるということを明確化しました。
 なお、顕在的なユーザーニーズが認められる、「海外出願支援業務」と「相談業務」についてのみ弁理士法に規定することとし、「国内出願支援業務(品種登録出願業務)」については、出願には種苗自体の提出が重要であり、書類の記載内容は書誌的事項が中心であるため、弁理士法には規定されていません。

 弁理士は、外国の行政官庁等に対する植物の新品種又は地理的表示に関する権利に関する手続きに関する資料の作成等を行うこと及び植物の新品種又は地理的表示の保護に関する相談に応ずることを業とすることができるものとする(弁理士法第4条③2,3、第8条3号)。

*UPOV(種苗に関する国際機関)HPのデータより特許庁作成
(産業構造審議会 第15回知的財産分科会より引用)

 

 

 

14.国際意匠登録出願における優先権書類の提出及び電子的交換に関する規定の新設
   (特許法施行規則及び意匠法施行規則等の一部を改正する省令案)

(施行日 2021年10月 1日)


 国際意匠登録出願の出願人が、国際出願と同時に優先権書類を国際事務局に提出することができ、提出された優先権書類について国際事務局との電子的交換を可能とするために、意匠法施行規則第19条第3項において特許法施行規則の読替規定が追加されました。

 日本を指定締約国とする意匠の国際出願についての優先権書類は、国際公表の日(国際登録の日から原則6か月後)から3か月以内に日本国特許庁長官に宛てて書面で提出することとなりますが、国際出願の願書との提出時期・提出先の相違や、今般の新型コロナウイルスの感染拡大に伴う国際郵便の引受け停止により、優先権書類の送付ができなかった又は困難となる事例が生じていました。

 また、同期間内にWIPOのデジタル・アクセス・サービス(以下「DAS」という。)を利用するための所定の手続をすることにより優先権書類の提出に代えることができますが、優先権主張の基礎となる出願をした国がDAS参加国でない場合は、それができませんでした。
 そのため、国際意匠登録出願の出願人が国際出願と同時に優先権書類を国際事務局に提出することができるようにし、提出された優先権書類について国際事務局との電子的交換を可能とするために、意匠法施行規則第19条第3項において特許法施行規則の読替規定を追加する改正がおこなわれました。

 

15.手続き書面において旧氏の併記が可能
   
(施行日 2021年10月 1日)(経済産業省令第72号)

 特許出願や、これに関連する手続等の書面に記載する自然人の氏名については、戸籍上の氏名を記載することになっていました。
 しかし、社会情勢の変化等を踏まえ、特許法等に定める手続書面に記載する氏名について、旧氏を氏に続いて括弧書きで併記することを可能とするよう規定が整備されました。

 書面に記載する氏名については、法令に別段の定めがある場合を除き、氏に続けて旧氏(住民基本台帳法施行令(昭和四十二年政令第二百九十二号)第三十条の十三に規定する旧氏をいい、外国人にあっては、当該国においてこれに相当するものをいう。)を括弧書で併せて記載することができる(特許法施行規則第1条第4項等関係)。

 また、特許庁長官等が必要と認めるときに、旧氏を証明する書面の提出を命ずることができる根拠規定が整備されました(特許法施行規則第1条第5項等関係)。

 

以上