住所:東京都品川区東品川 2丁目2番24号天王洲セントラルタワー
TEL:03-5715-8651(代表)

日本 特許権等の回復要件の緩和(施行日  2023年 4月 1日)

2022年 1月10日
浅村特許事務所 知財情報


日本 特許権等の回復要件の緩和(施行日  2023年 4月 1日)


 



 「特許法等の一部を改正する法律(令和3年法律第42号)(以下、「2021年改正法」という。)によって、2023年 4月 1日に施行される、特許権等の権利回復要件の緩和について纏ました。
 

1.概要

 手続期間の徒過により消滅した特許権等についての回復要件が、「正当な理由があること」から「故意によるものではないこと」に緩和されます。
 なお、権利を回復する場合、回復手数料(5.参照)が徴収されます。

 

2.回復要件を緩和した理由

 現行制度では手続の回復について、「正当な理由」を厳格に解した運用がされていました。この運用は、相当な注意基準を採用する国において60%~95%の認容率であるのに対し、日本は10~20%程度と突出して低く、各国主要国の産業財産制度と比べて手続きの回復が厳格すぎるとの指摘がありました。また、各国で権利化を図る場合、我が国のみ十分な権利の保護がなされない事態も想定されます。  
 そのため、認容率の向上、申請者の負担軽減、及び回復申請の予見性向上のため、2021年改正法において、「相当な注意」を求める法制から、「期間徒過が故意でないと認められる場合には、権利を回復できる」とする法制に緩和するものです。

 

3.緩和対象となる手続き

(1)外国語書面出願の翻訳文(特許法)

 外国語書面出願において、外国語書面、外国語要約書面の翻訳文を所定の期間内に提出することができなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定の期間*内に限り翻訳文を提出できる(特36条の2⑥)。

*一定の期間: 特36条の2⑤に規定による翻訳文を提出することができるようになった日から2月。
ただし、この期間の末日が特36条の2④に規定する期間の経過後1年を超えるときは、特36条の2④に規定する期間の経過後1年。

 (2)外国語でされた国際特許出願の翻訳文(特許法、実用新案法)

 外国語でされた国際特許出願において、明細書等の翻訳文、図面及び要約の翻訳文を所定の期間内に提出することができなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定の期間*内に限り翻訳文を提出できる(特184条の4④、実48条の4④)。

*一定の期間:  特184条の4③(実48条の4④)に規定による明細書等翻訳文を提出することができるようになった日から2月。
ただし、この期間の末日が国内書面提出期間(or翻訳文提出特例期間)の経過後1年を超えるときは、国内書面提出期間(or翻訳文提出特例期間)の経過後1年。

(3)特許出願等に基づく優先権主張、パリ条約の例による優先権主張(特許法、実用新案法、意匠法)

 優先権主張を伴う特許出願において、優先期間内に特許出願をすることができなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定の期間(2ヵ月)内に限り特許出願等に基づく優先権主張、パリ条約の例による優先権主張することができる(特41条①1,特43条の2①、特43条の3③、実8条①1、実11条①で準用する特43条の2①、特43条の3③、意15条①で準用する特43条の2①、特43条の3③)。

(4)出願審査の請求(特許法)

 特許出願審査請求において、その請求期間内に請求をすることができなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定の期間*内に限り当該請求をすることができる(特48条の3⑤)。

*一定の期間: 特48条の3①に規定による出願審査請求をすることができるようになった日から2月。
ただし、この期間の末日が特48条の3①に規定する期間の経過後1年を超えるときは、特48条の3①に規定する期間の経過後1年。

(5)特許料等の追納による特許権の回復(特許法、実用新案法、意匠法)

 特許料等の追納において、所定期間内に当該追納をすることができなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定の期間*内に限り当該追納をすることができる(特112条の2①、実33条の2①、意44条の2①)。

*一定の期間:  特112条④~⑥に規定する特許料及び割増特許料を納付(追納)することができるようになった日から2月。
ただし、この期間の末日が特112条①に規定する特許料を追納することができる期間の経過後1年を超えるときは、その期間の経過後1年。

 

【特許料の追納に係る権利回復の例】

(産業構造審議会 第15回知的財産分科会より引用)

(6)商標権等の回復要件の緩和(商標法)

 商標権の回復
 商標権の存続期間の満了前6月から満了の日までの期間内に商標権の存続期間の更新ができなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定期間*内に限りその申請をすることができる(商21条①)。

*一定の期間: 商標権の存続期間の更新登録の申請をすることができるようになった日(商21条①)から2月。
ただし、この一定の期間の末日が商21条③の規定により更新登録の申請をすることができる期間の経過後6月を超えるときは、その期間の経過後6月。

 

 後期分割登録料等の追納による商標権の回復
 商標権の満了前5年を経過後6か月以内に後期分割登録料及び割増登録料を追納することができなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定の期間*内に限り後期分割登録料及び割増登録料を追納することができる(商41条の3①)。

*一定の期間: 後期分割登録料(商41条の2⑤)及び割増登録料(商43条③)を納付することができるようになった日から2月。
ただし、この一定の期間の末日が、商41条の2⑤の規定により後期分割登録料を追納することができる期間の経過後6月を超えるときは、その期間の経過後6月。

 

 防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録出願
 防護標章登録に基づく権利の存続期間の満了前6月から満了日までの間に更新登録の出願をできなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定の期間*内に限り更新登録の出願をすることができる(商65条の3③)。

*一定の期間: 防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願をすることができるようになった日(商65条の3①)から2月。
ただし、この一定の期間の末日が、商65条の3②に規定により更新登録の出願をすることができる期間の経過後6月を超えるときは、その期間の経過後6月。

 

 書換登録の申請
 書換登録の申請期間内にその申請ができなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定の期間*内に限り書換登録の申請をすることができる(商附則3条③)。

*一定の期間: 書換登録の申請をすることができるようになった日(商附則3条①)から2月。
ただし、この一定の期間の末日が商附則3条②に規定する期間の経過後6月を超えるときは、その期間の経過後6月。

 

(7)在外者の特許管理人の特例(特許法、実用新案法)

 国際特許出願における特許管理人の選任の届出において、所定期間内に届出をすることができなかったことについて、故意でないと認められる場合には、一定の期間*内に限り当該届出をすることができる(特184条の11⑥、実48条の15②で準用する特184条の11⑥)。

*一定の期間:  特184条の11④に規定による特許管理人の選任の届出をすることができるようになった日から2月。
ただし、この期間の末日が特184条の11④に規定する期間の経過後1年を超えるときは、特184条の11④に規定する期間の経過後1年。 

 

期間徒過緩和対象手続一覧表

(産業構造審議会 特許制度小委員会:ウィズコロナ/ポストコロナ時代における特許制度の在り方(案)より抜粋)

 

4.回復手続き

回復理由書の提出(様式36条の3)
回復理由を証明する書面の提出
 特許庁長官は、回復理由書に記載された事項について必要があると認めるときは、回復理由を証明する書面の提出を命ずることができる。
申出書の提出  
 不責事由による場合には、その旨及び不責事由の申出書(不責事由の理由を記載した書面)を回復理由書と同時に提出する。
 なお、回復理由書に記載することにより申出書の提出を省略することができる。
不責事由証明書面の提出
 不責事由証明書面を申出書の提出から2ヵ月以内に提出する。ただし、特許庁長官がその必要がないと認めるときを除く。

 

5.回復手数料

 権利を回復するために徴収される手数料(特別表(第195条関係)11、実別表(第54条関係)7、意別表(第67条関係)3、商別表(第76条関係)5)。

 

 

6.特許協力条約に基づく国際出願に係る優先権の回復制度の要件の変更

 2021年改正法において、手続期間の徒過により消滅した特許権等についての回復要件が「正当な理由があること」から「故意によるものではないこと」に緩和されたことを踏まえ、特許協力条約に基づく国際出願に係る優先権の回復制度の要件についても「故意によるものではないこと」と緩和されます。

 国際特許出願又は国際実用新案登録出願について優先権の主張をしようとしたにもかかわらず優先期間内に国際出願をすることができなかった者は、優先期間の経過後2月以内に国際出願をしたときは、指定官庁としての特許庁に優先権の回復の請求をすることができる。ただし、故意に優先期間内に国際出願をしなかったと認められる場合はこの限りではない(特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規則第28条の3)。