浅村特許事務所 知財情報
(2017年 8月29日発行)
アメリカ アメリカ最高裁、IPRの合憲性についての審理に着手
アメリカ合衆国最高裁判所は、2011年のLeahy-Smith America Invents Act(AIA)時に創設されたIPR(当事者系レビュー:Inter Partes Review)が合憲であるかどうかについて審理する決定をしました。この事件は、Oil States Energy Services LLC v. Greene’s Energy Group, LLC, No. 16-712です (i) (ii) 。
◇ Oil States Energy Services LLCの訴え (iii)
既存特許の有効性を判断するためにUSPTOにより用いられる当事者対立手続、即ち当事者系レビューIPRは、陪審審理を伴わずに合衆国憲法第3条に該当しない裁定機関(すなわち、USPTO)を通して私有財産権を消滅させることにより、憲法に違反しているかどうか。
◇ この訴訟が注目される理由は?
IPRは制度が開始された2012年9月16日から2017年6月30日までに、6,577件の請求があり、その割合はAIA時に創設された申立制度全体(IPR、PGR;Post Grant Review及びCBM;Covered Business Method)の92%にも上ります[iv])。これは、原則として審理開始から1年以内に最終決定が行われることから審理期間が短く、ディスカバリも限定的であることから、無効確認訴訟に要する費用よりも低コストでありながら、専門性を有する審判官(PTAB)による審理を受けることができること、また、一部または全部のクレームが無効となる割合が高いことなど、請求人にとってメリットの多い申立手段であることが考えられます。
本判決でIPRが違憲と判断された場合、USPTO及び裁判所は早急に対応を迫られることになります。
アメリカ合衆国最高裁判所がIPRを違憲であるとした場合でも、その決定がIPR及び同様の手続きにより取り消された特許を復活させるとは限りません。しかし、係属中の訴訟の場合は、訴訟当事者は訴えを維持するかどうかを検討する必要が生じ、この裁判の結論がもたらす潜在的影響は非常に大きいといえます。
注釈:
(i) JDSUPRA (R) June 13, 2017
http://www.jdsupra.com/legalnews/supreme-court-to-hear-constitutional-27889/
(ii) SUPREME COURT OF UNITED STATES
https://www.supremecourt.gov/Search.aspx?FileName=/docketfiles/16-712.htm
(iii) SUPREME COURT OF UNITED STATES
https://www.supremecourt.gov/qp/16-00712qp.pdf
(iv) USPTO AIA Trial Statistics
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