浅村特許事務所 知財情報
2014年10月20日
英国 オピニオンサービスにおける評価項目が追加され、
庁による取消手続の開始が導入された
【要約】 2005年以降、知的財産庁により、新規性及び進歩性があるか、並びに特許侵害を構成するか、に関する拘束力のない評価を示すオピニオンサービスが行われている。2014年10月1日より、このサービスに評価項目が追加され、発明と認められるか、特許の対象となる発明か、産業上利用可能性はあるか、実施可能要件を満たしているか、補正により新規事項を追加していないか、SPC侵害を構成するか、についても評価を受けることができるようになった。 更に、オピニオンにおいて、明らかに、新規性及び/又は進歩性がないと評価された場合、知的財産庁が取消手続を開始できるようになった。 |
知的財産庁は、2005年以降、時間及び費用の負担の少ない特許紛争の解決を手助けするため、新規性及び進歩性の有無等について評価を示すオピニオンサービスを行っている。このオピニオンに拘束力はないが、裁判所における訴訟に至る前に紛争を解決するのに役立ち、訴訟を回避できない場合においても、当事者を好ましい方向へと向かわせ、時間と費用の節約を図ることもできる。なお、オピニオンの費用は、200ポンド(約35,000円)である。
[1] 改正前のオピニオンサービスについて
知的財産庁は、(a) 特許が侵害されているか又は侵害されることになるか、及び(b) 発明に新規性又は進歩性がないとして特許が無効となるか、についてのみオピニオンを発行可能であった。
オピニオンにおいて、特許が無効となると判断された場合、特許取消手続の開始は、第三者の責任において、必要な場合に行うことになっていた。なお、取消手続には、費用も時間も要した。
[2] 改正後のオピニオンサービスについて
これまでのオピニオンサービスに効果が認められたので、より広範な特許紛争に関してオピニオンを提供できるようにするため、2014年10月1日に評価項目が追加された。更に、SPC(Supplementary Protection Certificate)の侵害についても評価項目に含まれるようになった。
更に、特許に新規性又は進歩性がないことを示すオピニオンが発行された場合、知的財産庁は、特許取消手続を開始することができるようになった。
改正後は、以下の項目について拘束力のないオピニオンを提供することになった。
① 特定の行為が特許侵害を構成しているか否か、又は構成することになるか否か
② 特許発明が新規性及び/又は進歩性を有するか否か
③ 問題の発明が産業上利用可能であるか否か
④ 問題の発明が特許法第1条(1)(d)により特許を受けることができない事項に関するか否か
(参考:第1条(1)(d)の内容は、発見等は発明とは認められない、商業的利用が公序良俗に反する発明に特許は付与されない、手術等の発明に特許は付与されない等である。)
⑤ 特許発明を当業者が実施できるように、明細書において発明が明確に且つ十分に開示されているか否か
⑥ 特許の明細書に開示された事項が、出願時に開示された事項を超えているか否か
⑦ 特許によって与えられた保護が、許可されるべきではない補正によって拡張されたか否か
⑧ 特定の行為がSPC侵害を構成しているか、又は特定の行為を行った場合にSPC侵害を構成することになるか否か
⑨ SPCが有効であるか否か
[3] 手続について
改正前、知的財産庁は、問題が、同じ特許に関するものであり、且つ1つの被疑侵害行為に関するものである場合に限り、特許の侵害及び有効性の両方を1つのオピニオン請求に含ませることを認めていた。
改正後もこの実務は継続される。更に、特許の有効性、及び特許又はSPCの侵害の両方を1つの請求に含めることも可能となり、その請求には、有効性について評価すべき理由の数を幾つでも含ませることができる。
[4] 取消手続開始の可能性について
2014年10月1日以降に請求されたオピニオンであって、そのオピニオンにおいて、新規性又は進歩性の欠如が指摘されている場合、知的財産庁は、当該特許に対する取消手続を開始できるようになった。しかし、取消手続が開始されるのは、当該特許発明について新規性又は進歩性が明らかに欠如している場合に限られる。
一方、特許所有者は、次のような対策を講じることができる。
① 特許所有者は、取消手続開始前に、オピニオンの再考を求めることができる。
② 特許所有者は、問題点を克服して取消しを免れるための試みとして、意見書を提出し、
又は特許を補正することができる。
③ 特許が取消された場合、特許所有者は、上訴して、裁判所において取消決定について争うことができる。
特許法
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