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インド 規則改正

 2024年 4月1日
浅村特許事務所 知財情報


インド  規則改正


 

 2024年 3月15日、特許庁を監督する商工省が、2024年改正特許規則を公表し、同日に同改正規則は施行された。
 改正に関する商工省の通知、および改正前後の比較対応表(現地代理人からの情報に基づき弊所作成)を本報告に添付した。

 

主な改正点は以下の通りである。

 

1.規則12–対応外国出願の状況の報告要件の緩和

a.規則12(2)

 現在、特許法第8条1項の規定に基づく、関連外国出願の詳細(出願国、出願日、出願番号、出願の状態等)の提示義務に関し、規則12(1A)に基づいて、関連外国出願の詳細について、Form-3を出願日(PCTに基づく国際出願のインド移行出願では移行日)から6か月以内に提出する必要がある。また、規則12(2)に基づいて、出願時(移行時)に入手できなかった追加の関連外国出願の詳細について、Form-3を当該外国出願の出願日から6か月以内に提出する必要がある。また、判例実務上、関連外国出願の詳細について変更が生じた場合には、インド出願の登録時まで変更が生じた時点から6月以内に変更詳細を随時通知することがなされている。

 今般、改正規則12(2)では、追加の関連外国出願の詳細を、第一回審査報告書(FER)の発行日から3か月以内に提出する必要があると規定された。これにより、規則12(1A)に基づいて、関連外国出願の詳細についてForm-3を提出した後は、最初の拒絶理由通知の発行されるまで追加の関連外国出願の詳細についてForm-3を提出する必要がなくなる。また、関連外国出願の詳細について変更が生じた場合でも、最初の拒絶理由通知の発行されるまで変更詳細を通知する必要がなくなると考えられる。

 

b.規則12(3)

 規則12(3)は、特許法第8条2項に規定する管理官からの関連外国出願の処理に関する詳細の提出要求に関する規定であり、今般の改正で、以下の通り書き換えられた。

(3)管理官は、インド国外でなされた出願の処理に関連する情報(手続履歴)を参照するために利用可能なデータベースを使用できる。

(4)管理官は、書面で記録される理由により、出願人に対し、管理官からの通知の日から2カ月以内に、Form-3により新たな詳細を提出するよう要求することができる。

(5)これらの規定にかかわらず、管理官は、Form-4による申請があれば、Form-3の提出期間を3ヶ月まで遅延または延長することができる。

 これらの改正により、管理官からの要求に応じて新たな詳細を提出する期間が、通知の日から6月であったのが2月に短くなり、また、第8条に規定する詳細の提出の遅れを容認してもらうために規則137に基づく請願を提出していた実務が変更される。

 

2.規則13(2A)–分割出願の対象の明確化

 仮明細書もしくは完全明細書、または特許法第16条に基づく分割出願に開示された発明に関して、特許法第16条に基づく分割出願を提出できることを明確にする規定が追加された。この規則は、特許法は分割出願からの分割出願の提出を妨げるものではないとした、さまざまな司法機関の判決を成文化したものである。なお、親出願のクレームとの関係で課される厳格な客体的要件について変更はない。

 

3.規則24B(1)–審査請求期間の短縮

 審査請求期間が、優先日から48か月から31か月に短縮された。ただし、現行の48か月の期限は、2024年3月15日より前に提出された出願には引き続き適用される。なお、PCTに基づく国際出願のインド国移行出願では、今後、国内段階移行時に審査請求の指示をインド代理人にすることになると考えられる。

 

4.規則24B(6)および24C(11)–特許可能な状態に置くまでの期間の延長

 特許法21条に規定する特許可能な状態に置くまでの期間は、第一回審査報告書(FER)の発行から6月であるが(規則24B(5)および24C(10))、1回に限り3ヶ月までの延長が可能である。

 この期間延長の請求は、以前は、第一回審査報告(FER)の発行から6月が経過する前に行わなければならなかったが、今般の改正により、延長される期間の満了前に期間延長の請求を行うことができるようになった。

 なお、現地代理人によると、規則24B(6)および規則24C(11)に規定される延長期間に加え、後述する改正規則138に基づき期間の延長を請求できる可能性があり、IPOがこの点を明確にすることが求められている、とのことである。

 

5.規則29A-新規性喪失の例外適用のためのFormの導入

 新規性喪失の例外適用について特に公的なFormがありませんでしたが、今般、当該適用をうけるために、所定の手数料と共にForm-31(商工省の通知の添付物を参照)を提出する旨の規定が追加された。

 

6. 規則55および56-軽率な異議申立の抑制、および異議申立の迅速化

a.規則55(3)

 管理官は、異議申立について一応有効な事案(prima facie case)と認められるか否かを判断し、認められないと判断した場合には、異議申立人に通知し、異議申立人からヒアリングの要求があったときは、ヒアリングから1か月以内に理由を記載して代理を拒否または一応有効として受理する決定をし、そのような要求が無かった場合には、通知から1か月以内に、異議申立を拒否する決定をし、一応有効として受理する決定をした場合には出願人に通知する。異議申立について一応有効な事案(prima facie case)と認められる場合には、異議申立から1月以内に理由を記載して異議申立を一応有効として受理する決定をし、出願人に通知する。

 今般の改正で、管理官は、異議申立について一応有効な事案(prima facie case)と認められるか否かを判断する権限が与えられ、軽率な異議申立が抑制されることが期待される。

b.規則55(4)

 規則55(3)の通知を受け取った出願人は、通知から2か月以内に陳述と証拠を提出することができる。

 改正前は、3か月の期間が規定されており、改正により提出期間が短縮された。

c. 規則55(5)

 現在、付与後の異議申立に関し規定されている規則62(2)-(4)が、付与前の異議申立にも適用される規定が追加され、これにより、ヒアリング手続などが付与前の異議申立にも適用されることとなった。

d. 規則56(4)

 付与後の異議申立に関し、異議部は、異議申立書と提出された書類(異議申立書、証拠、答弁書、証拠、弁駁書、証拠、職権調査資料)を審理し、提出書類が異議部に送付された日から2月以内に、異議申立書に記載の根拠に関し理由を付して報告書を提出する。

 従来、報告書作成期間は3月であったが2月に短縮された。

 

7.規則70A–発明者証明書の発行

 特許出願に発明者として記載される者からの請求に応じて、管理官は発明証明書を発行することができる旨新たに規定された。

 

8.規則80(3)–年金前払いの割引

 年金を4年以上の期間について、電子モード前払いすると、年金が10パーセント割引される旨の規定が追加された。

 

9.規則131(2)およびForm-27–特許発明実施報告の労力軽減

 現在、特許発明の実施に関する陳述書は、特許付与直後の年度から毎年度提出する必要があります。これが、今般の改正により、3年度毎に変更されました。

 また、Form-27が簡素化された。特許権者は、インドにおける製造および/または輸入から生じる収益/価値に関する情報を提供する必要がなくなった。さらに、共同特許権者のうちの一人だけが、全ての特許権者を代表して単一の実施に関する陳述書を提出することができるようになった。ただし、ライセンシーは別途Form-27を提出する必要がある。

 Form-27の提出期間について、3ヶ月までの期間延長を、1ヶ月につき10,000インドルピー(約121米ドル)の手数料を支払ってForm-4にて請求することができ、期間満了日(3年毎の年度末)から6か月以内に提出する必要がある。申請者が自然人、小規模企業、スタートアップ企業、または教育機関の場合は、手数料が80%減額される。なお、現地代理人によると、後述する規則138による延長が可能かどうかについて、IPOが必要な説明が求められているとのことである。

 

10.規則137–管理官の裁量による期間延長

 従前は、管理官の裁量による期間延長が幅広く認められていたが、今般の改正で、以下の場合には管理官の裁量で期間延長ができないことが規定された。

1 新規則12(5)のForm-3の提出期間の延長

2 出願の国内処理基準時(31月)およびとその英語翻訳の提出期限

3 規則21の規定に該当する場合、優先権書類および優先権書類の認証済み英訳の提出期限

4 審査請求および早期審査請求の期限 

5 特許可能な状態に置くまでの期間、およびその延長

6 付与前異議申立において規則55(3)の通知を受け取った出願人が、陳述と証拠を提出する期限

7 年金支払期限の延長

8 特許法77条(1)(f)(g)に規定する決定の審査または命令の破棄を求める申請書の提出期限

9 特許法146条の規定に基づく管理官から要求に応じて特許発明の実施に関する陳述書を提出する期限

 なお、現地代理人によると、IPOは、規則137で除外された期間延長について、規則138に基づく延長が認められるのかを明確にすることが求められている、とのことである。

 

11.規則138–請求による期間延長

 改正前は、規則20(4)、規則20(6)、規則21、規則24B(1)、(5)および(6)、規則24C(10)および(11)、規則55(4)、規則80(1A)および(2)、ならびに規則130(1)および(2)を除く、手続を行うために本規則が定める期間について、管理官が1月延長できると規定されていたが、改正により、例外規定が除かれ、本規則が定めるすべての手続期間について延長される期間の満了前までにForm-4を提出して請求することで、最大で6か月の延長を請求できることとなった。延長請求は、6か月の延長期間満了までは、何回でも行うことができる。現地代理人からの情報によると、規則137で期間延長の対象外とされている場合でも、規則138の対象となる可能性があるとのことである。

 

添付

商工省の通知 

改正前後の比較対応表

旧特許規則:THE PATENTS RULES, 2003

特許法:Indian Patent Act 1970-Sections (ipindia.gov.in)