2021年12月27日
浅村特許事務所 知財情報
アルゼンチン 早期権利化制度について
アルゼンチン共和国で特許を取得する際には、アルゼンチン国家産業財産権庁(INPI:Instituto Nacional de Propiedad Industrial)(以下、「アルゼンチンINPI」という。)に出願し、早期権利化制度「決議56/2016」に基づく申請を行うことによって早期権利化を図ることができます。
アルゼンチンINPIにおける特許審査までの期間は、約5年程度は必要ですので、この早期権利化制度を利用することにより、短期に権利の取得ができる可能性が高くなります。
アルゼンチンを含む諸外国で同様の発明について特許権を取得しようとする場合には、日本などアルゼンチン以外の諸外国において、同様の発明に係る出願を行うことを検討することが有効となります。
決議56/2016適用の要件 運用
1.適用要件
アルゼンチン出願の出願日より後に外国にてアルゼンチン出願に係る発明に特許が付与されたこと、
アルゼンチン国内出願の出願より後に当該発明の公報が発行されたこと、
特許を付与した当該国の特許庁が実体審査を行ったこと、
アルゼンチンと同様の特許要件適用基準を満たしていること。
特許庁ウェブサイトより引用(www.jpo.go.jp/news/kokusai/ar/562016.html)
2.請求項の一致
「アルゼンチン出願の請求項」は、「海外特許庁において特許付与された請求項」より狭いか、それと同等であることが必要です。
申請の際に、その証拠及びその証拠のスペイン語翻訳文を、アルゼンチンINPIに提出する必要があります。
3.「決議56/2016」申請手数料
申請手数料*を納付する必要があります。
*手数料: 9,840アルゼンチンペソ(2021年12月時点)
4.申請
実体審査が行われる前に、出願人は「決議56/2016」の適用を自発的に申請することができます。
なお、出願人は、国内出願の請求項を外国で特許された請求項に補正するための補正書とその翻訳文を添付して申請する必要があります。
5.「決議56/2016」に基づく申請を促す通知
出願人が自発的に申請を行わない場合であっても、実体審査の際に、アルゼンチンINPIから「決議56/2016」に基づく申請を促す通知を受けることがあります。
その場合、出願人は当該通知に従い、「決議56/2016」に基づく申請を行うことが可能です。
アルゼンチンINPIは出願人に対し、当該通知から90日以内に国内出願のクレームを外国で特許されたクレームに補正するよう求めることができます。
6.審査結果
「決議56/2016」に基づく申請から60日以内に、査定が発行されます。
参考 アルゼンチン特許制度の概要
言語:スペイン語で出願する必要があります。
審査請求制度:出願から3年以内に実体審査手数料を納付して審査請求を行う必要があります。
新規性喪失の例外規定:グレースピリオドは開示日から1年
特許権の存続期間:出願から20年まで
特許権の実施義務:必要
なお、
・ 特許付与から3年経過後または出願日から4年経過後に、発明が実施、
または、発明実施のための準備がなされていないとき、
・ 当該発明の実施が中断されて1年を超えるとき
は、強制実施権設定の対象となります。
特許審査ハイウェイ(PPH)試行プログラムは終了となります
早期権利化制度「決議56/2016」を利用することができるため、
日本とアルゼンチン間で2017年4月より実施していた「特許審査ハイウェイ(PPH)試行プログラム」は、2021年12月31日をもって終了となります。