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日本 マルチマルチクレームの取扱い変更

2021年12月17日
浅村特許事務所 知財情報


日本 マルチマルチクレームの取扱い変更


 

 
 産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会において、マルチマルチクレームの記載が例外なく認められなくなることが2021年12月15日に了承されました。
 したがって、今後は国際動向に協調した形でのクレーム記載が求められます。
 なお、当該運用の変更時期は現時点で発表されていませんが、発表された際にはお知らせします。

 

マルチマルチクレームとは

マルチマルチクレームとは、2以上のクレームを択一的に引用するクレームが、他のマルチクレームの基礎となることをいいます。

 請求項 1   Aを含む組成物。
 請求項2 さらにBを含む請求項1に記載の組成物。

 請求項3 さらにCを含む請求項1又は2に記載の組成物。
 請求項4 さらにDを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。  
 請求項5 さらにEを含む請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。 

請求項4と請求項5が、マルチマルチクレーム記載となります。

 

図示すると、以下となります。

 請求項1 A
 請求康2 A+B
 請求項3 A+C、A+B+C
 請求項4 A+D、A+B+D、A+C+D、A+B+C+D
 請求項5 A+E、A+B+E、A+C+E、A+B+C+E、A+D+E、A+B+D+E、A+B+C+D+E

マルチマルチクレーム記載は、上記の請求項4、5を簡略して記載できるメリットがありました。

しかし、以下の問題が生じていました。

1.マルチマルチクレームの記載よって、表現できる引用形式を採らない場合に記載される請求項の数は、指数関数的に増加すること。

2.請求項の数が30以下の出願が99%を占めているにもかかわらず、引用形式を採らない場合に記載される請求項が1,000以上になる出願が約5%存在すること。

3.日米中欧韓の特許庁(5庁)において、米国、中国、韓国はマルチマルチクレーム記載を認めておらず、日本はこれら3国と協調することができていないこと。また、PCT出願もマルチマルチクレーム記載を原則認めていないこと。

4.我が国の出願人が海外へ出願する際、マルチマルチクレームの記載を認めていない国への出願が、全体の73%を占めていること。

 

出典:産業構造審議会 知的財産分科会 基本問題小委員会「ウェイズコロナ/ポストコロナ時代における産業財産権政策の在り方―とりまとめー」より

※ 1  引用形式請求項は、 独立請求項を更に限定するもの又は独立請求項の特定の実施形態を表す従属請求項である必要がある。
※ 2  各カテゴリー (製品、 方法、装置、用途) につき独立請求項は原則1つとする制限がある。
※ 3  少なくとも 1 つのマルチクレ一ムがある場合には手数料に一定額が加算される。
※ 4  拒絶理由のうち、 実体拒絶 (rejection) ではなく方式拒絶 (objection) の対象となる。
  なお、 審査前に、特許出願管理局 (The office of Patent Application Processing) において、 マルチマルチクレ一ムの確認及び出願手数料の算定が行われる。
※ 5  マルチマルチクレ一ムの制限が規定される専利法実施細則第22条の違反があれば、 審査意見書にて指摘がされる。
  一方、
専利法実施細則第53条に規定する拒絶査定の理由とはされない。

産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第16回 審査基準専門委員会ワーキンググループ 配布資料を編集

 

 そのため、国際的調和、第三者の監視負担及び請求項の数と引用形式を採らない場合に記載される請求項の数の差を少なくすることによる過度な審査負担を軽減する観点から、マルチマルチクレームの記載を制限することとしたものです。
 この制限は、特許出願及び実用新案登録出願において適用されます。
 なお、マルチマルチクレーム記載につき例外は設けられません。


審査基準の改訂について

「特許・実用新案審査基準」に、特許法第36条6項4号(委任省令要件)違反及び実用新案法第5条6項4号(委任省令要件)違反と判断される類型として、マルチマルチクレームが新たに追加されます。 
 なお、「特許・実用新案審査ハンドブック」の関連する箇所についても必要な修正が行われます。

 

拒絶理由について

特許法第36条6項4号(委任省令要件)違反の拒絶理由となります。
なお、マルチマルチクレーム記載違反は、無効理由、異議理由とはなりません。

 

ツールの提供について

マルチマルチクレームの検出などの支援ツールについて、提供する予定とのことです。