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【中国】 医薬品専利紛争早期解決メカニズム行政裁決弁法」に関する解釈について [2021年10月 6日]

2021年10月 6日
浅村特許事務所


【中国】医薬品専利紛争早期解決メカニズム行政裁決弁法」に関する解釈について


   
浅村特許事務所
中国弁護士   鄭 欣佳 訳

 

2021年9月18日に、中国知識産権局が「医薬品専利紛争早期解決メカニズム行政裁決弁法」の解釈を公表しました。
その日本語訳です。

 

「医薬品専利紛争早期解決メカニズム行政裁決弁法」に関する解釈について

中国国家知識産権局より

 2021年 9月18日公布

 「医薬品専利紛争早期解決メカニズム行政裁決弁法」は2021年7月5日に中国国家知識産権局により公表されました。当該弁法は、公表日から施行されます。
 「医薬品専利紛争早期解決メカニズム行政裁決弁法」は24条からなります。行政裁決の請求人、裁定可能な医薬品専利の範囲、司法ルートとの連携、行政裁決と無効宣告の関係、行政裁決の執行と公表、行政裁決に対する司法救済、その他の事件処理等について規定されています。


一. 制定経過

 国家知識産権局は、以下3つの方法で「医薬品専利紛争早期解決メカニズム行政裁決弁法」(以下、「裁決弁法」という。)の制定を推進していました。

1. 米国、韓国などの医薬品パテントリンケージ制度を比較分析、実証分析を行い、包括的に検討していました。また、調査により、中国で実施される医薬品専利紛争早期解決メカニズムに対する国内外の製薬企業の態度、国内製薬業界の期待・要望を把握しようとしています。

 

2.医薬品専利紛争早期解決メカニズムに対する理論研究を深めました。研究機関や大学機関に、関連制度分析や政策提言に関する研究業務を委託し、中国における医薬品専利紛争早期解決メカニズムの実証を協力してもらうとともに、同メカニズムが中国の医薬品産業に与える影響を調査していました。

 

3. 各関係者と積極的に協議しました。全国人民代表大会常務委員会立法委員会、最高人民法院、財政部、商務部、司法部、国家医薬品監督管理局等の関連部門と書面による協議を行い;公式ウェブサイト、公式マイクロブログ等により各界の意見を公募し、関連する商工会議所、協会、企業、法律事務所等及び関連する専門家から計16回、合計102件の意見が寄せられ、企業、知財サービスを提供する企業、専門家と学者の代表とそれぞれフォーラムを開催し、意見や提案を聞きました。

 

二. 主な内容

1. 行政裁決の請求人

「専利法」第76条によると、関連専利権者、利害関係者、又は医薬品上市請求人になることができます。利害関係者とは、関連専利の被許諾者又は登録された医薬品上市許可の保有者を指します。

 

2. 行政裁決を請求する期限

 「医薬品専利紛争早期解決メカニズム実施弁法(試行)」の規定によると、専利権者又は利害関係者は、国家医薬品審査評価機構が医薬品上市許可申請を公表した後45日以内に、上市許可を申請している医薬品に関連する技術方案が、関連する専利権の保護範囲に含まれることを確認するための行政裁決を請求することができます。
 国家医薬品審査評価機関が医薬品上市許可申請を公表した日から45日以内に、専利権者又は利害関係者が医薬品の専利権紛争について人民法院に訴訟を提起せず、又は行政裁決を請求しなかった場合、医薬品上市許可申請者は、上市許可を申請する医薬品の関連技術方案が関連専利権の保護範囲に含まれないことを確認する行政裁決を請求することがでます。

 

3. 行政裁決を請求することができる医薬品専利の範囲

 「裁決弁法」には、行政裁決を請求することができる医薬品専利の条件として、関連専利情報が既に中国上市医薬品専利情報登録プラットフォームに登録・公開され、且つ、専利の種類が「医薬品専利紛争早期解決メカニズム実施弁法(試行)」の関連規定に適合することが規定されています。

 国家医薬品監督管理局が作成した「医薬品専利紛争早期解決メカニズム実施弁法(試行)」の政策解読によると、中国上市医薬品専利情報登録プラットフォームに登録できる医薬品専利は、以下の通りです。

 ① 化学医薬品(原薬を除く)の
   医薬品有効成分の化合物に関する専利
   有効成分を含む医薬組成物に関する専利
   医薬用途に関する専利

 ② 漢方薬の
   組成物に関する専利
   抽出物に関する専利
   医薬用途に関する専利

 ③ バイオ医薬品の
   有効成分の配列構造に関する専利
   医薬用途に関する専利

 関連専利には、中間体、代謝物、結晶形、調製法、検査方法等の専利が含まれません。

 

4. 行政裁決ルートと司法ルートの連携

 「裁決弁法」第4条によると、行政裁決の立件手続きには、医薬品審査・承認過程における関連専利紛争が人民法院に立件されていないことが条件とされています。同一の専利紛争が人民法院に立件された場合、国家知識産権局は、当事者の行政裁決請求を受理しません。これは、関連紛争が行政ルート又は司法ルートのいずれかで行われるようにし、紛争解決における手続きの無駄や衝突を避けるためです。

 

5. 行政裁決と無効宣告の関係

 「裁決弁法」第14条によると、医薬品専利紛争に関する行政裁決を行う場合、当該専利に関わる一部の請求項が無効とされた場合、国家知識産権局は有効な請求項を維持することを前提に行政裁決を行います。専利に関わる全ての請求項が無効とされた場合、国家知識産権局は行政裁決の請求を却下します。

 また、事件の進行中に当事者が当該専利の無効請求を行った場合、国家知識産権局は事件の処理を中止することができないことが「裁決弁法」第16条に規定されています。

 

6. 行政裁決の執行・公表

 「裁決弁法」では、行政裁決が下された後に当事者に送達され、国務院医薬品監督管理部門に写しが送達されると同時に、関連規定に基づいて公表することが規定されています。行政裁決が公開される際に、商業秘密に関わる情報は削除しなければなりません。

 また、「医薬品専利紛争早期解決メカニズム実施弁法(試行)」の関連規定によると、専利権者又は利害関係者は、行政裁決書を受領してから10営業日以内に、国家医薬品審査評価機関に行政裁決を報告しなければなりません。

 

7. 行政裁決の司法救済

 「裁決弁法」第19条には、医薬品専利紛争に関して、当事者が国家知識産権局の行政裁決に不服がある場合、法律に基づいて人民法院に訴訟を提起することができると規定されています。「中華人民共和国行政訴訟法」第46条には、行政訴訟は、行政裁決書が送達された日から6ヶ月以内に提起をすることができることが規定されています。



注釈:
① 上市とは、承認された新薬の市場販売が開始されることです。中国において医薬品の販売開始も「上市」と言います。