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中国 医薬品関連の知的財産権の保護強化に向けて米国と協定

浅村特許事務所 知財情報 
 (2020年1月17日発行)


中国 医薬品関連の知的財産権の保護強化に向けて米国と協定


 トランプ米国大統領と劉鶴(りゅうかく)中国副首相は、1月15日に経済貿易協定の”PHASE ONE”に署名しました。これには、中国における医薬品関連の知的財産権の保護強化に関する合意も含まれています。

 中国は、特許出願人が進歩性と十分な開示要件(sufficient disclosure)を確立するために補足データを提出することを認め、パテントリンケージ特許期間調整(PTA)および存続期間延長(PTE)を確立することを約束しています。

◇補足データに関して

 医薬の特許出願人に開示の十分性および進歩性を含む特許要件を満たすために補足データに依存することを許可するという一般的な条件を提供しています(第1条10項)。国家知識産権局(CNIPA)は、2014年以降、補足データの許容性に関する基準を緩めてきました。その代表的なケースとして、2019年に特許有効性を争う事件で、特許権者によって提出された補足データにより初めてCNIPAが医薬特許の進歩性を認めたことが挙げられます。しかし、それにもかかわらず、中国の基準は米国に比べるとはるかに厳格です。 中国特許庁が、この協定に従って補足データに対してより寛大になることが期待されます。

◇ パテントリンケージに関して

 特許権者等にジェネリック企業の販売承認申請について通知し、仮差止を含む救済を求め、侵害/有効性の紛争を解決するための時間と機会を特許権者等に提供することなどが記載されています(第1.11条)この協定前の2017年に、中国の国家薬品監督管理局(NMPA)は、パプリックレビューのための一般的なパテントリンケージ手順の草案を公開しましたが、これまで進展がありませんでした。今回、米中合意を考慮して、パテントリンケージの法制化が加速されることが期待されます。

◇ 特許期間の調整(PTA)に関して

 出願から4年または特許審査請求から3年を超える、CNIPAによる不当な遅延を補償するために、特許期間を延長することが記載されています(第1.12項 2(a))。現在、CNIPAでの審査請求からの特許出願の審査期間は平均で約22.5ヶ月ですが、医薬品出願の審査期間はより長くなる可能性があります。現在の中国の特許法にはPTAがないため、特許法が改正されることが予想されます。

◇ 特許期間延長(PTE)に関して

 中国での販売が承認された新医薬品、その製造または使用方法に関する特許について、医薬品の規制当局の承認により失われた時間を補償するために、存続期間を最大5年 、また販売承認日から最大14年延長することになります(第1.12項 2(b))。 これは2019年初頭に公開された中国特許法草案に基本的に添ったものです。中国特許法草案は間もなく可決されることが期待されます。

◇ データ保護について (1)

  米中合意は、規制上の販売承認のために提出された未開示試験データや他のデータの保護も要求しています(第1章のセクションCの前文)。

   NMPA(以前のCFDA)は、2018年初頭に医薬品試験データの保護に関する規定の草案を公開しました。この草案では、革新的な医薬品及びオーファン/小児用医薬品に6年間の試験データ保護が与えられ、革新的な治療用生物製剤には12年の試験データ保護が与えられており、この草案は間もなく可決される見込みです。

 


注釈:

(1) 中国における、医薬品の臨床試験データ保護に関する実施規定案の公表(2018年)については、以下リンクをご参照ください。

リンク先:

「浅村特許事務所 知財情報(2018年5月発行)」

 

 

 


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