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アメリカにおいて、当事者系レビュー(IPR)は合衆国憲法に違反していないとする米国最高裁判決について

浅村特許事務所 知財情報
第273-1号(2018年5月発行)


アメリカにおいて、
当事者系レビュー(IPR)は合衆国憲法に違反していないとする
米国最高裁判決について



2018年4月24日、米国最高裁判所(以下「最高裁判所」という)は、当事者系レビュー(「inter partes review」のこと)は合衆国憲法に違反しないとする判決を下しました。

当事者系レビューとは

アメリカの当事者系レビューは、一度登録された特許を無効にすることを求める手続きです。日本の特許制度では特許無効審判にあたる手続きです。
特許無効の申し立てを受けて、米国特許商標庁の審判部(「Patent Trial and Appeal Broad」のこと)が特許の有効性を審理します。

当事者系レビューは、特許侵害訴訟で訴えられた被告が、原告の特許は無効であると申し立てることによって請求されることが多いと言われています。

今回の判決にいたるまでの概略

Oil States Energy Services, LLC(以下、「Oil States」という)は、Greene’s Energy Group, LLC(以下、「Greene’s Energy」という)が自身の特許を侵害したとして、連邦地方裁判所に訴訟を起こしました。

これに対し、Greene’s Energyは、地方裁判所にOil Statesの特許の有効性に異議を唱えるため提訴し、米国特許商標庁に対し、当事者系レビューを申請しました。
地方裁判所はOil Statesに有利な命令を出しました。一方、米国特許商標庁の審判部は、Oil Statesのクレームは最先の発明でないとする決定を下しました。

Oil States側は合衆国連邦巡回区控訴裁判所に控訴し、自身の特許が有効であるとの主張に加えて、当事者系レビューの合憲性について異議を唱えました。

この案件が保留中である間に、別の案件において、合衆国連邦巡回区控訴裁判所はOil Statesによって提起されたのと同じ憲法論争を拒否する決定を出しました。

その後Oil Statesは、合衆国憲法第3条および修正第7条に基づく当事者系レビューの合憲性ついての判断を求めて、最高裁判所に裁量上訴しました。

最高裁判所判決の概要

Oil Statesは、「特許は「私有の」財産権であり、合衆国憲法第3条に基づく裁判所のみが特許を無効とすることができる」と主張しました。また、当事者レビューの決定は、陪審ではなく判事によって下されることから、合衆国憲法修正17条に定める陪審による裁判を受ける権利にも違反すると主張していました。

これに対し最高裁判所は、当事者系レビューは合衆国憲法第3条および修正第7条に違反しないと結論付け、以下のように述べています。

― 当事者系レビューは「公的権利の原則」(public rights doctrine)の範疇にあるものであるとし、当事者系レビューは単に特許の再考にすぎない。

― 特許を付与することは、司法の決定を伴わずに、行政機関または立法機関が実施できる憲法上の機能の1つである。

― 当事者レビューと特許の無効性は、合衆国議会が米国特許商標庁のような行政機関に適切に委任することができる主要事項であり、合衆国議会が憲法3条以外の裁判機関に裁定を委ねる場合には、その場合での陪審なしの手続きを禁止しているものではない。

終わりに

この判決は、当事者系レビューが合衆国憲法に違反していないことを示したものです。このことにより当事者系レビューは、アメリカの特許の有効性に異議を唱えるにあたっては、今後も重要な手続きであると考えられます。
ただし、最高裁は「Oil Statesが申立てた理由についてのみ判断した」と述べ、今回の判断の適用範囲が狭いことを強調しています。したがって、Oil Statesが申立てなかった理由(遡及適用、法の適正手続違反等)により当事者系レビューが違憲とされる可能性は残っています。

 i)本件の判決内容については、下記をご参照ください。

https://www.supremecourt.gov/opinions/17pdf/16-712_87ad.pdf

 


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