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オーストラリア 連邦控訴裁判所、単離DNAの特許適格性を認める

浅村特許事務所 知財情報 
 2014年11月20日


オーストラリア 連邦控訴裁判所、単離DNAの特許適格性を認める


 

【要約】

オーストラリア連邦控訴裁判所は、単離DNAとゲノムDNAとが構造的及び機能的に相違することに着目して、単離DNAの特許適格性を認めた。この判断は、昨年、米国最高裁判所により下されたMyriad事件における判断とは異なるものであり、その前審であるCAFCの判断と同じである。

 

2014年9月5日、オーストラリア(AU)連邦控訴裁判所は、単離DNAとゲノムDNAとは、構造的及び機能的に相違するとして、単離DNAに特許適格性があると判断した。この判断は、AMP(Association for Molecular Pathology) v. Myriad Genetics, Inc.事件における米国最高裁判所の判決とは対照的である。

米国最高裁判所における判断について

2013年、米国最高裁判所は、相補的DNA(cDNA)は、イントロン配列を含んでいないので、天然のDNA又はゲノムDNAと区別されるとし、cDNAは、米国特許法第101条に従って特許適格性があると判断した(上記AMP v. Myriad 事件(133 S. Ct. 2107, 2119 (2013)))。

一方、米国最高裁判所は、単離されたDNA断片は周囲にある遺伝物質から単離されたに過ぎないので、全ゲノムDNAから単離された天然に存在するDNA断片は、cDNAとは区別されるとし、特許法第101条に従って特許適格性がないと認定した。

このように、米国最高裁判所は、cDNAを特許適格性ありとする一方、単離DNAを特許適格性なしとして区別する判断をし、両方に特許適格性を認めたCAFCの判決(AMP v. USPTO事件(653 F.3d 1329, 1353(Fed. Cir. 2011)))の一部を破棄した。CAFCでは、ゲノムDNAとの構造的相違に着目し、単離DNA及びcDNAはゲノムDNAとは著しく相違するとして、単離DNAについても特許適格性を認めていた。

AU連邦控訴裁判所の判断について

AU連邦控訴裁判所は、D’Arcy v. Myriad Genetics Inc. 事件([2014] FCAFC 115)において、単離された核酸配列(DNA又はRNA)の特許性について審理した。

AU連邦控訴裁判所は、前記米国最高裁判所の理由付けを適用せず、オーストラリア法に、より適合しているCAFCの理由付けを適用し、cDNA及び単離DNAの両方に特許適格性があると判断した。

審理の対象となった特許(オーストラリア特許第686004号)のクレーム1(下記参照)は単離DNAとcDNAの両方に関連し、前記米国における事件に係るクレームと類似していた。

AU連邦控訴裁判所は、CAFCと同様に、単離DNAとゲノムDNAとの間には有意な構造的相違があると認定し、特に、単離DNAはそれを生体内で機能させる細胞成分から取り出されている点に着目した。すなわち、ゲノムDNAは明白な若しくは単一の結果をもたらすことなく、動的な環境中に存在するのに対して、単離DNAは不活性であり、細胞機構の助けなしには、ポリペプチド生成物を生成することができないとし、ゲノムDNAは、細胞環境内で機能するのに対して、断片である単離DNAは遺伝子検査に役立つとして、両者の構造的相違が、このような顕著な機能的相違をもたらすと判断した。

更に、AU連邦控訴裁判所は、オーストラリア議会がDNA断片に対する例外に関する2010年法案を検討する際、このような例外を作成する機会があったにも関わらず、作成しなかったことを指摘した。

こうして、AU連邦控訴裁判所は、単離DNAとゲノムDNAとの間の構造的及び機能的相違に基づいて、上記Myriad事件における米国最高裁判所とは異なり、単離DNAの特許適格性を認定するに至った。

 

AU Patent No. 686004

Claim 1

An isolated nucleic acid coding for a mutant or polymorphic BRCA1 polypeptide, said nucleic acid containing in comparison to the BRCA1 polypeptide encoding sequence set forth in SEQ.ID No.1 one or more mutations or polymorphisms selected from the mutations set forth in Tables 12, 12A and 14 and the polymorphisms set forth in Tables 18 and 19.

 

 

 


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