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韓国 大法院の冒認出願に係る判示

浅村特許事務所 知財情報 
2014年9月18日


韓国 大法院、冒認出願に係る特許権を正当権利者に対して移転登録することは
できないと判示


 

【要約】

これまで、韓国においては、無権利者が特許出願(冒認出願)をして、特許権の設定登録を受けた場合、正当権利者の救済手段として、その特許権を正当権利者に直接、移転登録できるようにすべきであるとする見解と、その特許権を一旦無効にして、所定期間内に、正当権利者がその発明について新たに別の特許出願をすべきであるとする見解とがあった。

2014年5月16日、大法院は、正当権利者に対して直接、移転登録することはできないと判示した。

 

本事件は、発明者からその発明に係る事業計画の提案を受けた者が、発明者から特許を受ける権利を承継することなく、特許出願(冒認出願)をし、特許権の設定登録を受けたことに対して、特許を受ける権利を有する正当権利者が救済を求めた事案に関する。

 

上記のように、これまで、韓国では、無権利者(第34条)が特許出願(冒認出願)をして、特許権の設定登録を受けた場合、正当権利者の救済手段として、その特許権を正当権利者に直接、移転登録できるようにすべきであるとする見解と、その特許権を一旦無効にして、所定期間内に、正当権利者がその発明について新たに別の特許出願をすべきであるとする見解とがあった。この対立した状態は、大法院による本判決(大法院2012ダ11301号)により明確にされた。

 

発明をした者又はその承継人は、特許を受ける権利を有し(第33条第1項本文)、特許を受ける権利を有しない者によってなされた特許出願(冒認出願)について、特許権の設定の登録がなされた場合には、その特許権は、無効理由を有することになる(第133条第1項第2号)。

 

特許法は、このような場合の正当権利者の救済手段として、第35条を設けている。

大法院は、先願主義に、当該例外規定を設けることにより、正当権利者を保護しているので、このような特許法の趣旨に照らせば、正当権利者は、特許法(第35条)の救済手続によらずに、無権利者に対して、直接、特許権の移転登録を請求することはできない、と判示した。

 

なお、日本国においては、特許を受ける権利を有する者が、冒認出願に係る特許権について、移転請求できることが規定されており(日本国特許法第74条)、直接、移転登録可能である。

 

韓国特許法

第33条(特許を受けることができる者)

①発明をした者又はその承継人は、この法で定めるところによって特許を受けることができる権利を有する。—

第35条(無権利者の特許の正当な権利者の保護)

第33条第1項本文による特許を受けることができる権利を有さなかった事由で第133条第1項第2号に該当して特許を無効にするという審決が確定された場合には、その無権利者の特許出願後にした正当な権利者の特許出願は、無効となったその特許の出願時に特許出願したものとみなす。ただし、その特許の登録公告がある日から2年が過ぎた後又は審決が確定された日から30日が過ぎた後に正当な権利者が特許出願をした場合には、この限りでない。

 

日本国特許法

(特許権の移転の特例)

第74条

特許が第123条第1項第2号に規定する要件に該当するとき(その特許が第38条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第6号に規定する要件に該当するときは、当該特許に係る発明について特許を受ける権利を有する者は、経済産業省令で定めるところにより、その特許権者に対し、当該特許権の移転を請求することができる。

2  前項の規定による請求に基づく特許権の移転の登録があつたときは、その特許権は、初めから当該登録を受けた者に帰属していたものとみなす。当該特許権に係る発明についての第65条第1項又は第184条の10第1項の規定による請求権についても、同様とする。

 

 

 


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