浅村特許事務所 知財情報
2014年8月5日
アメリカ 最高裁判所、CAFCのクレームの明確性の基準は低すぎると判示
【要約】 心拍計に係る特許の侵害訴訟において、最高裁判所は、改正前特許法第112条第2段落に規定されるクレームの明確性の要件の判断基準について、CAFCの基準は低すぎると判断し、CAFCの判決を破棄し、差戻した。 |
最高裁判所は、2014年6月2日、運動器具に使用される心拍計に係る特許の侵害訴訟(Nautilus, Inc. v. Biosig Instruments, Inc.事件)において、改正前特許法第112条第2段落(下記参照)に規定されるクレームの明確性の要件の判断基準について、従来のCAFCの基準は低すぎると判示して、CAFCの判決(2013年4月26日、2012-1289)を破棄し、CAFCに差戻した(No. 13-369)。
バイオシグ インスツルメンツ社(米国特許第5,337,753号の所有者である。)は、ノーチラス社の運動器具が特許を侵害していると主張して、特許侵害訴訟を提起した。
問題の特許は、運動器具に使用される心拍計に関し、「互いに離間して・・・設けられた活性電極及び共通電極を具えた心拍計」をクレームしている(下記参照)。
地方裁判所は、ノーチラス社による問題の特許のクレーム中の「互いに離間して」の表現は、同法第112条第2段落に規定されるクレームの明確性の要件を満たしていないので、無効であるとする略式判決の申立を認めた。
しかし、CAFCは、クレームについて「解釈が容易」であり、且つ、解釈されたクレームが「解決できない程度に曖昧」でない限り、同法第112条第2段落に規定するクレームの明確性の要件を満たすと判示し、地方裁判所の判決を覆した。
これに対して、最高裁判所は、CAFCの基準は、法定の明確性の要件を満たしておらず、且つ、信頼できる指針を裁判所に示していないと判示した。
最高裁判所は、当該クレームがその明細書及び審査経過を考慮した上で、合理的な確実さで、当業者にその発明の範囲を示していない場合は、その特許は、不明確さを理由に無効であると判示した。
最高裁判所は、明確性の基準は、言葉のもつ固有の意味による限定を考慮するのみならず、特許はクレームの範囲を明確に捉えることができるように正確でなければならないことをも要求していると強調した。
裁判所は、CAFCの判決を破棄し、最高裁判所の判断に従って更に審理するために事件をCAFCに差戻した。
USPTOは、最高裁判所のこの判決日に、明細書中にクレーム等で使用した用語の定義を記載したグロッサリセクションを設けることによって、特許の質を高めることができるかどうかを判断するために、グロッサリ パイロット プログラムを開始した(海外情報要約234号参照)。
改正前特許法第112条第2段落
The specification shall conclude with one or more claims particularly pointing out and distinctly claiming the subject matter which the applicant regards as his invention.
米国特許第5,337,753号のクレーム1(関連部分のみ)
“Claim 1
A heart rate monitor for use by a user in association with exercise apparatus and/or exercise procedures, comprising:
an elongate member;
electronic circuitry including a difference amplifier having a first input terminal of a first polarity and a second input terminal of a second polarity opposite to said first polarity;
said elongate member comprising a first half and a second half;
a first live electrode and a first common electrode mounted on said first half in spaced relationship with each other;
a second live electrode and a second common electrode mounted on said second half in spaced relationship with each other;
said first and second common electrodes being connected to each other and to a point of common potential;…”
最高裁判所の判決
http://www.supremecourt.gov/opinions/13pdf/13-369_1idf.pdf
CAFCの判決
http://www.cafc.uscourts.gov/images/stories/opinions-orders/12-1289.Opinion.4-24-2013.1.PDF
注)外部のリンク先記事は消去されることもあります。
Email: asamura@asamura.jp |
|
Copyright© ASAMURA PATENT OFFICE, p.c. All Rights Reserved. |