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EPO 技術審判部の判断について

浅村特許事務所 知財情報 
 2014年7月15日


EPO 技術審判部、スイス型クレームと第2医薬用途クレームとは二重特許の関係にはならないと判断


 

 

 

 

【要約】

EPO技術審判部は、親の特許がスイス型クレームを含み、子の分割出願が第2医薬用途クレーム(EPC2000)を含む場合に、子が二重特許になるかに関する事件において、クレームの発明主題は、技術的特長及びカテゴリによって判断され、スイス型クレームは目的限定プロセスクレームであり、第2医薬用途クレームは目的限定プロダクトクレームであるから、両クレームは、互いにカテゴリが異なり、発明主題及び保護範囲が相違するので、二重特許にはならないと判断した。

 

 EPCは、人又は動物の治療法への特許を禁止する。また、原則的に、既知の物質に対する新規な用途は、その物質に新規性をもたらさない。

しかし、例外的に、既知の有効成分に対する新規な医薬用途については、スイス型クレームの形式で特許を付与してきた。更に、EPC2000の法改正で、第2医薬用途クレームの形式が導入された。

従って、欧州においては、既知の有効成分に対する更なる医薬用途に関する発明については、スイス型クレーム形式及び第2医薬用途クレーム形式がある。

 

スイス型クレーム:“[疾患Y]の治療のための医薬の製造における[物質X]の使用”

第2医薬用途クレーム(EPC2000):“[疾患Y]の治療に使用するための[物質X]”

 

 このような状況の下、EPO技術審判部は、審決T1780/12(2014年1月30日)において、スイス型クレームの保護範囲は、第2医薬用途クレーム(EPC2000)の保護範囲とは相違すると判断した。 

この審決は、欧州の各国裁判所における多くの特許権行使の事件に影響すると思われる。

 

 本事件は、上記のように、子の分割出願が二重特許となるかに関する事案である。審判請求人は、スイス型クレームを含む欧州特許(親)を既に取得していた。そして、同じ物質且つ同じ医薬用途に対するEPC2000による第2医薬用途クレームを含む分割出願(子)も出願していた。

 

 審査部では、EPC2000による第2医薬用途クレームは、スイス型クレームと等価な保護をもたらすという立法趣旨等を考慮して、EPC2000による第2医薬用途クレームは、対応するスイス型クレームと同じ発明主題を対象としていると判断した。その結果、それぞれのクレーム範囲は、適切に異なっているという出願人の意見を退けて、二重特許を理由として子の分割出願を拒絶した。

 

 しかし、技術審判部は、クレームの発明主題は、技術的特長及びカテゴリ(即ち、プロダクトのクレーム、プロセスのクレーム、装置のクレーム、又は用途のクレームであるかどうか)によって判断されるという理由により、審査部の判断に同意しなかった。

技術審判部は、それぞれのクレームのカテゴリを考慮した結果、親の特許のクレーム1(スイス型クレーム)は、目的を限定したプロセスクレームであり、一方、子の分割出願のクレーム1(第2医薬用途クレーム)は、目的を限定したプロダクトクレームであると判断した。

従って、2つのクレームの発明主題は異なるので、親の特許との二重特許を理由に子の分割出願への特許付与が妨げられることはないと結論付けた。

 続けて、技術審判部は、発明主題に相違があるので、2つクレーム形式によってもたらされる保護範囲も相違すると述べた。

 

 本審決から、方法等(method, process, use)のクレームは、物それ自体のクレームに比べて、保護範囲が狭いので、目的限定プロセスクレーム(スイス型クレーム)は、目的限定プロダクトクレーム(EPC2000による第2医薬用途クレーム)に比べて保護範囲が狭いということになる。

 従って、スイス型クレームをEPC2000による第2医薬用途クレームに変更することは、保護範囲の拡張になるとして認められない可能性があるので、係属中の出願には、スイス型クレームに加えて、EPC2000による第2医薬用途クレームも並存させることが好ましい。なお、分割出願が係属している場合には、分割出願に含まれるEPC2000による第2医薬用途クレームは、付与された特許に含まれるスイス型クレームと競合しないということは、審決の通りである。

 

(審決)

http://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/recent/t121780eu1.html

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