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アメリカ USPTO、暫定的な審査官用インストラクションを発表 

浅村特許事務所 知財情報
 2014年 7月14日


アメリカ USPTOAlice Corp. v. CLS Bank 事件の最高裁判所の判決を受けて暫定的な審査官用インストラクションを発表


【要約】

Alice Corp. v. CLS Bank 事件に対する最高裁判所の判決を受けて、USPTOは、暫定的な審査官用のインストラクションを発表した。これによると、特許法101条に関する適用除外理由(抽象的概念、自然法則)、及びカテゴリによって異なっていた審査時の分析の仕方が統一化されることになる。

なお、本インストラクションは、暫定的なものであり、現在は、パブリックコメントを受け付けている。

 

2014年6月25日、特許庁は、審査官が特許法101条に基づいてクレームを審査する際に使用する新しいインストラクション(“Preliminary Examination Instructions in view of the Supreme Court Decision in Alice Corporation Pty. Ltd. v. CLS Bank International, et al.”(下記URL))を発表した。なお、これは、実体的な特許法に関する判決が出た後の通常の対応である。

 

この新しいインストラクションの重要な点は、特許庁が、Mayo v. Prometheus 事件の枠組みを全てのタイプの発明に対して適用していくことを明確にした点である。

 

新しいインストラクションは、2つの点で以前の特許庁のガイダンスと異なっている。

(1) アリス社事件(Alice Corp. v. CLS Bank 事件 No.13-298(IPグローバル情報第236-5号参照))により、全てのタイプの適用除外に対して、同じ分析の仕方を適用するべきことが確立された。

これに対して、先行するガイダンスでは、抽象的概念を含むクレームに対する分析の仕方(MPEP 2106(1I)(B)のBilski ガイダンス)は、自然法則を含むクレーム対する分析の仕方(MPEP 2106.01 のMayo ガイダンス)と異なっていた。

(2) 更に、アリス社事件により、全てのカテゴリのクレーム(例えば、プロダクトクレーム及びプロセスクレーム)に対して、同じ分析の仕方を適用するべきことが確立された。

これに対して、先行するガイダンスでは、抽象的概念を含むプロダクトクレームに対する分析の仕方(MPEP 2106(I1)(A)の内容に基づく)は、プロセスクレームに対する分析の仕方(Bilskiガイダンス)と異なっていた。

 

更に、特許庁は、クレームが2つのステップのうちそれぞれのステップに該当するかどうかを判断するためのガイダンスを示している。

[1] クレームが抽象的概念を対象としているかどうかを判断する最初のステップについては、アリス社事件において言及された抽象的概念についての4つの例がメモランダムに示されている。

* 基本的な経済上の実務 (例えば、仲介による決済、即ち、決済リスクを緩和するために第三者を仲介させること)

* 人間の行動を体系的に纏める、ある種の方法 (例えば、リスク回避法を指示する一連のステップ)

* 概念(アイデア)自体 (例えば、原理、発端、動機)

* 数学的関係/数式 (例えば、触媒的変換方法における警報限界を計算するための数式、又は2進化10進数を純2進記数方式に変換するための数式)

 

[2] 抽象的概念がクレーム中にあると判断された場合、審査官は、次のステップに進み、クレーム中の何れかの要素又は要素の組み合わせが、クレームが抽象的概念それ自体をかなり超えることを確かなものとするのに十分であるかどうかを判断しなければならない。

「かなり超える」を判断するのに十分と思われる限定の例としては以下のものが挙げられる。

* 別の技術又は技術分野における改良 (例えば、特定のゴム成型法において使用される数式)

* コンピュータそれ自体の機能に対する改良

* 特別な技術的環境に対する抽象的概念の使用を一般的に結合することを超える有意な限定 (クレーム中にハードウェアの使用を記載することは、「特別な技術的環境に対する(方法)の使用」、即ち、コンピュータを介しての実行、を一般的に結合することを超える有意な限定とはならないことに留意すること)

 

「かなり超える」と判断するには十分ではない限定の例としては、以下のものが挙げられる。

* 抽象的概念を用いてそれ(又は等価なもの)を実行する (“apply it”(or an equivalent) with an abstract idea)、又はコンピュータを用いて抽象的概念を実行するとの単なる指示(例えば、物理的機械、即ちコンピュータ、を用いて数学的原理を単に実行すること)

* 周知の、日常的な、そして産業界で既に知られている従来的な行動である、一般的なコンピュータの機能を発揮させるために、単なる一般的なコンピュータを必要とすること (例えば、データの取得、勘定残高の調整、及び自動化された指示の発行のためのコンピュータの使用)

 

MEMORANDUM

http://www.uspto.gov/patents/announce/alice_pec_25jun2014.pdf

 


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