
浅村特許事務所 知財情報
2014年 7月 12日
EU 欧州諸国における白黒商標の取り扱いについての改定
(色彩を付した商標が白黒商標では保護されない可能性)
【要約】 欧州諸国において白黒商標の取り扱いについて統一が図られ、色彩を付した商標は、白黒商標には含まれない(同一ではない)という取り扱いに改定された。 優先権の判断における同一の範囲は緩和され、改定によって認容の範囲が広がった。 OHIMは優先権の判断以外に大きな変更は無いとしているが、色彩を付した商標が白黒の出願/登録商標で一律には保護されない点で注意が必要である。 |
OHIM及び欧州諸国は、白黒商標の保護に係るガイドラインを改定した。
白黒商標の保護範囲に関する商標実務は、EU各国でも対応が異なっていたが、大半のEU加盟国及びOHIMは、白黒の商標の保護をより制限することに同意した。
適用時期は各国により異なるが、OHIMは2014年6月2日以降に係属している出願及び司法手続に本改定を適用する(デンマーク、ノルウェー及びスウェーデンには法的制約があり、イタリア、フランス及びフィンランドは不参加)。
従来、OHIM及び多数の各国商標庁は、白黒の商標の登録は全色を含む方針を採っていたが、白黒の商標の登録で全ての色彩が自動的に保護されることはなくなった。
優先権及び相対的拒絶理由の判断については、色彩の差異が微差(insignificant difference)である場合を除いて、同一の商標とは認められないこととなった。OHIMが示した例は以下のようなものである。
※insignificant differenceとは、妥当な注意力を有する需要者が、両商標を対比観察した場合にのみ認識できる程度の差異をいう。
*OHIMが示した例:
優先権の判断については、従来は厳格に同一性が要求されていたが、今回の改定により、微差の範囲まで認められることとなった。
使用については、以下の要件を満たす場合は、色彩の変更が識別力のある特徴を変更しないものであるとして、真正な使用と認められる。
- a) 文字/図形の要素が一致しており、且つこれらが識別力のある主要な部分である場合
- b) 影のコントラストが重要である場合
- c) 色彩又は色彩の組み合わせが、それ自体では識別性を有しない場合、及び、
- d) 色彩が商標の全体的な識別力に主要な影響を与える要因の一つではない場合。
OHIMは真正な使用の具体的な例は示していないものの、上記要件は、過去の判例(MAD case (Judgment of 24/05/2012, T-152/11, `MAD´, paras. 41, 45))に沿うものであるとしている。
*MAD case:色彩を変更しても使用が認められた例