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日本 e-Filingによる商標国際登録出願の手数料納付方法の見直し

2023年 7月27日
浅村特許事務所 知財情報


日本 e-Filingによる商標国際登録出願の手数料納付方法の見直し


 

 

 不正競争防止法等の一部を改正する法律(知財一括法)が可決・成立し、2023年 6月14日に法律第51号として公布されました。この法律にて、商標の国際登録出願の手数料納付方法の見直しがされました。

 

 国際登録出願の手数料納付方法の見直しの施行日は、2024年 1月 1日となります。

 

1.従来の問題点

 我が国の出願人が、商標登録を各国で受けようとする場合には、マドリッド協定議定書に基づく商標の国際登録出願制度(国際登録出願制度)*¹ を利用することができます。

 国際出願制度を利用して世界知的所有権機関(WIPO)の国際事務局に商標の国際登録出願をする場合、日本の特許庁に本国官庁手数料を日本円で納付する一方、WIPOには基本手数料等をスイスフラン*² で納付しなければならず納付先が別々となり、その手続が煩雑となっていました。


*¹ マドリッド協定議定書に基づく商標の国際登録出願制度とは   
ある国の出願人が、自己の商標出願又は登録を基礎として、当該出願を受理し又は登録した国の所管官庁(本国官庁)を通じて国際的に統一された願書様式を用いて、WIPOを通じて願書を提出(国際登録出願)し商標の国際登録をすることによって、出願人が指定した複数の締約国(指定国)に商標出願がされた場合と同一の効果を得ることができるという商標における国際出願制度のこと。

*² 手数料  
本国官庁手数料:本国官庁が本国認証等を行うための手数料(マドリッド議定書第8条(1)、商標法第76条①3)  
基本手数料:WIPOが方式審査・国際登録をするための手数料(マドリッド議定書第8条(2)(ⅰ))
付加手数料、追加手数料:指定国における審査料+10年分の登録料(マドリッド議定書第8条(2)(ⅱ) (ⅲ))             (個別手数料の受領を宣言した締約国を除く)   
個別手数料:指定国における審査料+10年分の登録料(マドリッド議定書第8条(7)(a))      
      (個別手数料の受領を宣言した締約国に限る(日本国特許庁など))

 



2.WIPOの出願システムの導入(2022年6月)

 特許庁は、マドリッド協定議定書に基づく商標の国際登録出願について、書面手続に加え、WIPOが提供するMadrid e-Filing(WIPOの出願システム:以下「e-Filing」)を利用した電子出願の受付を、2022年 6月 1日に開始しました。このe-Filingは、本国官庁手数料とWIPOへ納付すべき手数料を一括してWIPOに納付する機能を備えています。
 
 しかしながら、商標法第76条①3において、本国官庁手数料は特許庁長官に納付すべき手数料と規定されていることにより、出願人はWIPOへの納付手続に加え、特許印紙を貼付した書面等を用いて別途特許庁に本国官庁手数料を納付しなければならず、出願人はオンライン手続の利便性を十分に享受できない状況にありました。

 


3.今回の改正

 出願人の利便性向上のため、本国官庁手数料について他の手数料と一括してスイスフランによるWIPOへの支払いを可能とするため、国際登録出願をe-Filingで行う場合に限り、本国官庁手数料をWIPO国際事務局に納付する改正を行いました(商標法68条の2⑤*¹、工業所有権特例法8条等)。
 

*¹ 商標法第68条の2第5項(新設)
国際登録出願を電磁的方法(政令で定めるものを除く。)によりしようとする者は、実費を勘案して政令で定める額に相当する額を議定書第2条(1)に規定する国際事務局に納付しなければならない。

 

 参考)WIPO Madrid e-Filing

 

 特許庁構造産業審議会知的財産分科会 資料を編集