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中国 重大な専利権侵害紛争の行政裁決弁法の解釈

2021年11月30日
浅村特許事務所


中国 重大な専利権侵害紛争の行政裁決弁法の解釈


 

   
浅村特許事務所
中国弁護士   鄭 欣佳 訳

 

新専利法と同時に施行された「重大な専利権侵害紛争の行政裁決弁法」に関する国家知識産権局の解釈です。
その日本語訳です。

中国国家知識産権局  

2021年10月12日公布

 

一.  制定経過 

 「2020年10月、第13期全国人民代表大会常務委員会第22回会議では、中華人民共和国専利法(以下、「専利法」といいます。)の改正に関する決定が採択され、2021年6月1日に施行されました。専利法の第70条1項では、国務院特許行政部門は、専利権者または利害関係者の要求に応じて、全国にわたって重要性がある専利権侵害紛争を処理することができると規定されています。
 その規定は、立法的に、国家知識産権局に重大な専利権侵害紛争を処理する中央権限を与えています。

 国家知識産権局は、専利法に基づき、「重大な専利権侵害紛争の行政裁決弁法」(以下、「裁決弁法」といいます。)を制定し、2021年5月28日に公布しました。
 裁決弁法は2021年6月1日に発効しました。

二.主要内容 

 裁決弁法は、重大な専利権侵害紛争の定義、立件の条件及び必要書類、証拠調査の権限、検証・鑑定規則、技術調査官、期限、執行及び公開、その他の裁決手続きにつき規定がされています。 

 

1.重大な専利権侵害紛争の定義

 裁決弁法の第3条では、重大な専用権侵害紛争に該当する状況を規定しています。重大な公共の利益に関わる場合、業界の発展に著しく影響する場合、省級(日本の都道府県に相当する)行政区域を跨ぐ重大な事件に該当する場合、その他重大な影響を及ぼす可能性のある専用権侵害紛争などが含まれます。
 重大な専利権侵害紛争になる場合、省、自治区、市の専利業務を管理する部門は予備審査を行い、証明書類を発行し、国家知的財産権局に請求書類を送付します。送付の消印日は行政裁定の請求日とみなされます。国家知識財産権局は、裁定弁法の立件に関する規定に基づいて審査を行い、この規定を満たしている事件を立件させます。
 重大な専利権侵害紛争に該当しない請求については、国家知識産権局は立件せず、請求人に対して、専利業務を管轄する地方専利管理局に処理を請求することができる旨を告知します。

 

2.立件条件及び必要書類

 裁決弁法には立件できる行政裁決事件は第3条の状況に該当する上、下記の条件に満たさなければならないと規定されています。

  (1)請求人が専利権者又は利害関係者であること

  (2)明確な被請求人がいること

  (3)明確な請求事項と具体的な事実、理由があること

  (4)人民法院が当該専利権侵害紛争について立件していないこと

 それに加え、裁決弁法には請求人が、請求書および証拠を提出するとともに、請求人の所在地、または侵害が発生した省・自治区・市の専利業務を管理する部門が発行した、第3条に記載された状況に適合する証明を提出しなければなりません。

 

3.証拠調査の権限

 証拠提出の要件について、裁決弁法には「主張する者が証明する」という原則に従って、当事者が自らの主張に対して、証拠を提出する責任を有することを規定されています。当事者が客観的な理由で証拠を集めることができない場合、初歩的な証拠と理由を提出し、書面で国家知識産権局に調査または検査を申請することができます。
 それと同時に、裁決弁法は、事件担当者が調査または検査を行う際に行使できる権限も規定されています。

 

4.検証・鑑定規則

 複雑な技術問題が関わり、検証・鑑定が必要である専用権侵害紛争について、裁決弁法には、国家知識産権局が当事者の請求に応じて関連機構に検証・鑑定を委託することができることが規定されています。また、当事者が検証・鑑定を請求した場合、検証・鑑定機構について、双方当事者が協議を経て確定することができ、協議が成立しない場合、国家知識産権局が指定することを明らかにしました。証拠調を経ない検証・鑑定意見は、処理決定の証拠としてはなりません。

 

5.技術調査官

 裁決弁法は、国家知識産権局が、技術調査官を指名して事件処理に参加させ、技術調査意見を提出させることができることを明確にしました。また、技術調査意見の法的地位も明確にされました。技術調査意見は、合議体が技術事実を認定するための参考とすることができます。  技術調査官に関する詳しい規定は、国家知識産権局が2021年5月7日に公表した「技術調査官が特許、集積回路配置設計の侵害紛争行政裁決参加に関する若干の規定(暫定)」を参照にして実施されます。

 

6.期限

 まず、立件期間を明確にしました。「専利行政法執行弁法」を参照すると、立件期間は、要求が同弁法第4条の規定に適合する場合、請求書を受領した日から5営業日以内に立件し、請求人に通知しなければなりません。
 また、口頭審理の通知期限を明確にしました。「専利行政法執行弁法」の関連規定により、事件の管轄部門は、口頭審理より少なくとも 3 営業日前に、口頭審理の時間と場所を当事者に知らせなければなりません。しかし、一部の関連企業および業界団体は、重大な専利紛争の状況が通常複雑であることを考慮して、口頭審理の準備期間を3営業日とするのでは短すぎることを提言しました。裁決弁法の第16条は、口頭審理の時間と場所を当事者に通知する期限を口頭審理の5営業日前までに延長しました。
 さらに、事件の処理期限を明確にしました。立件日から3ヶ月以内に処理決定を下さなければなりません。事件が複雑であるため又はその他の理由により、所定の期間内に処理決定を下すことができなかった場合は、承認を得て、1か月延長することができます。事案が特に複雑であり又はその他特別な状況があり、延期しても処理決定を下すことができず、承認を得て引き続き延期する場合は、延長の合理的な期間を同時に確定しなければなりません。

 

7.執行及び公開

 裁決弁法の第23条には、行政裁決で専利権侵害行為が成立すると判断された場合、権利侵害行為を直ちに停止するよう命じ、かつ必要に応じて、権利侵害行為の速やかな制止に協力・助力するよう関係主管部門、地方人民政府の関係部門に通知しなければならないことが明確に規定されています。当事者は、これに不服がある場合、行政裁決書を受け取った日から15日以内に、「中華人民共和国行政訴訟法」に基づいて人民法院に提訴することができます。法律で定める事由を除き、訴訟期間において行政裁決の執行は停止しません。
 行政裁決が下された後、「政府情報公開条例」及び関連規定に従って社会に公開しなければなりません。行政裁決が公開される場合は、営業秘密に関連する情報を削除しなければなりません。これは裁決公開中に、当事者の営業秘密、その他の権利や利益が損なわれないようにするためです。

 

8.その他の手続き

 また、裁定弁法では、事件処理担当者、立件手続き、忌避制度、事件の併合処理、口頭審理、処理を中止する条件、無効訴訟との関係、調停手続き、執行及び公開、司法救済の手段などについて規定しています。