2020年12月 8日
浅村特許事務所 知財情報
インド 改正特許規則(2020)年次実施報告書(Form 27)の提出について
(年次実施報告書(Form 27)については更新された記事があります。)
インド商工省、産業・国内取引促進局(DPIIT)は、2020年10月19日に特許改正規則(2020)を公表しました。本改正規則は
- 規則21:優先権書類の提出(PCT国内移行出願)
- 規則131:年次実施報告書(Form 27)の提出
に関するものですが、今回は上記のうち、「規則131:年次実施報告書(Form 27)の提出」に関する改正についてご案内します。
(1)改正前
インド特許の特許権者及び実施権者は、その特許発明の商業的実施について毎年、実施報告書(Statement of Working)を提出しなければなりません。実施報告書は現地代理人によって、その書式番号からForm 27や、略記からSoWとも呼ばれます。
従来は暦年である1月1日から12月31日までの期間の実施報告書を、翌年の3月31日までに提出することが求められていました。そのため従来、当所では、インド特許を有し且つ当該インド特許の年金支払い業務を当所にご依頼されているお客様を対象として、年末から年始にかけて年次実施報告書の提出のご案内をしてきました。
(2)改正後
2-1)年度と提出期限の変更
このたび、規則131(2)が改正されたことにより、商業的実施についての実施報告書の提出期限などが大きく変更されました。
新規則では、年度を暦年(1月1日から12月31日まで)から、インド会計年度(4月1日から翌年3月31日まで)に変更するとともに、実施報告書の提出期限が各会計年度の満了日から6か月以内、すなわち会計年度終了日の3月31日から6か月以内に変更されました。したがって、新規則によれば、前年度の実施報告書は、次年度の9月30日までに提出することが求められます。実質的には年度末の提出期限が3か月から6か月に延びたと考えることができます。
そのため当所では、今後は新規則の下、インド特許を有し且つ当該インド特許の年金支払い業務を当所にご依頼されているお客様を対象として、会計年度終了後の4月1日以降に年次実施報告書の提出のご案内をすることになります。
なお、特許が登録された会計年度内に実施報告書を提出することは不要となり、新たに登録になったインド特許について1回目の実施報告書をいつ提出すればよいかに関する曖昧さもなくなりました。例えば、インド特許が現会計年度、すなわち2020年4月1日から2021年3月31日までの間に登録された場合、1回目の実施報告書は、2021年4月1日から2022年3月31日までの翌会計年度内の実施に対して、2022年9月30日までに提出しなければならないということになります(下表参照)。
特許登録時期 |
2020/4/1から2021/3/31まで |
1回目の報告書のための実施対象期間 | 2021/4/1から2022/3/31まで (翌年) |
1回目の報告書の提出期限 | 2022/9/30まで(翌々年) |
特許が登録された会計年度内に実施報告書を提出することが不要となり、翌年度内の実施に対して、翌々年の9月30日までに実施報告書を提出することになりますので、2021年以降の特許登録時期、実施対象期間、実施報告書の提出期間のタイムラインは下図のようになります。図中、「登録」・「実施」・「報告」の文字は以下の意味を表します。
登録:この期間中に登録になった特許
実施:報告義務のある左記の特許の実施対象期間
報告:実施報告書の提出期間
インド実施報告タイムライン(図が開かない場合はここをクリックしてください)
IPGlobal20220112
(なお、上図の2021年の実施報告予定タイムラインにおいて、2019年3月31日以前に登録になった特許についての実施報告書は2021年9月30日までに提出する必要がありますが、その実施対象期間を会計年度の2020年4月1日から2021年3月31日までとすると、従前からの暦年制度による2020年1月1日から同年3月31日までの期間(interim period)が対象から外れてしまいますので、この期間を加入してあります。)
2-2)Form 27の簡素化について
新しいForm 27は記載が簡素化されました。その主な変更は、次の通りです。
◆特許権者は、インドにおける製造、またはインドへの輸入により得られた収益または発生した価値の概算金額(正確でなくてもよい)を提供すればよい。
◆特定の特許発明から発生する概算収益または価値を、関連特許から別個に求めることができない場合、そのすべての特許が同一特許権者に付与されているものであれば、複数の「関連」特許をまとめて情報提出することができる。
◆特許権者が特許の実施または不実施について説明することを希望する場合、500語で記述するための欄が設けられている。
◆すべての特許権者およびすべてのライセンシーは、特定の特許(または一人の特許権者が所有する一連の関連特許)についてForm 27を提出する必要がある。共同権利者は、1つの実施報告書にまとめて提出できる。
◆認定代理人は、特許権者またはライセンシーに代わって実施報告書に署名することができる。
◆特許発明が、その公益上の必要性と部分的に、適切に、または完全に合致しているかどうかについて、特許権者またはライセンシーが陳述することは不要になった。これにより、インドにおいて明確な公益上の必要性を有さない発明の特許権者にとって救済となる。
◆インドに輸入または販売されている特許製品の数量または販売数を報告する必要がなくなり、インドでの特許発明による収益または価値の合計を報告すればよいことになった。したがって、実施報告書からは特許製品の単価を知られることはない。また、国毎に輸入の詳細を報告する必要もなくなった。