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中国 中国国家知的財産権局(CNIPA)が特許審査ガイドラインの修正案を発表

浅村特許事務所 知財情報 
 2020年10月21日


中国 中国国家知的財産権局(CNIPA)が特許審査ガイドラインの修正案を発表


 

中国国家知的財産権局(CNIPA)が、特許審査ガイドラインの化学、医薬、およびバイオテクノロジーのセクションの修正案を発表したので報告する。詳細は、下記の対応表*に記載の通りであり、改定された箇所に下線を付し、特に重要な改定は赤で示した。以下に主な変更点を述べる。

 *審査指南改定の対応表はこちら

 

(1)出願後に提出されたデータの取り扱いについて2つの例が追加された。

中国最高人民法院は2020年9月10日に司法解釈を発表し、裁判所は特許出願人から提出された出願後の実験データを検討することが規定されている。進歩性と開示要件で適用されるが、どのような場合に出願後データを受け入れるかについての具体的規定はない。審査ガイドラインの修正案は、出願後データが受け入れられる場合の例を示すことを意図している。ただし、現在の基準と比較して、受け入れられる出願後データの基準に実質的な変更は見られず、特許出願に実験データが存在しない場合に、出願後に実験データを提出して創造性又は開示要件の充足を主張することは依然として困難である。

例1は、詳細な説明に、クレームされた化合物の薬理効果を実証するデータが記載されていない出願において、出願後に先行技術文献と実験データを提出し、実験データに示す効果が考慮されるとされたケースである。例2は、詳細な説明に、クレームされた化合物の薬理効果を実証するデータが記載されていた出願において、審査で引用された文献に対するクレームされた発明の創造性を証明するために、出願後に比較実験データを提出し、実験データに示す結果が考慮されるとされたケースである。

例1では、クレームされた化合物と先行技術の化合物との間の構造的類似性から、クレームされた化合物の薬理効果が十分開示されているとしているが、この場合、構造的に類似した先行技術の化合物に対するクレームされた化合物の予想外の優れた効果を証明するための比較データを提出しても考慮されず、クレーム化合物の創造性が認められない状況が生じ得る。

例2は、出願後に提出されたデータが有効な典型例であり、現在の実務でも時々見られる対応である。なお、この例に関連し、現地代理人によれば、ある化合物の特性をパラメータで記載するクレームの数値範囲を先行技術との関係で限定補正した場合に、補正後の範数値囲について、先行技術に対する予想外の優れた効果を証明するために比較データを提出しても考慮されない場合もある、ということである。

 

(2)化合物発明の新規性欠如の推定についてのルールの明確化

化学名または分子式(または構造式)などの化合物の構造情報が先行技術文献によって開示された場合、当業者が出願日より前に化合物を製造できなかったことを出願人が証明しない限り、当該化合物は新規性を有しないものとされる。先行技術文献に開示された化合物の構造情報が、クレームされた化合物と先行技術の化合物を区別するのに不十分である場合、審査官は、参考文献に開示されている化合物の物理的/化学的パラメータ、調製方法または効果に依存して新規性欠如を推定するための立証責任を負う。

 

(3)化合物発明の創造性を評価するためのルールの確立

「構造的に類似した化合物は創造性を確立するために予期しない効果を持たなければならない」という現在の過度に単純化されたルールに代え、より合理的な「3段階アプローチ」(課題―解決アプローチ)が、化合物の進歩性を評価するための一般的なルールとして明示された。このアプローチを適用する場合、クレームされた化合物と最も近い先行技術の化合物との間の構造の相違、およびそれから生じるクレームされた化合物の使用/効果が考慮され、解決する「客観的な技術的課題」を確立するための基礎となる。修正案は、このアプローチに従って化合物の創造性を評価する5つの例も示す。

 

(4)バイオテクノロジーの分野における創造性を評価するためのルールの確立

この技術分野でも、一般的なルールとしての「3ステップアプローチ」(課題―解決アプローチ)が、明示された。さらに、修正案は、生物学的発明の進歩性を評価するために考慮すべき要素として、クレームされた発明と先行技術との間の構造的差異、系統発生的関係、および技術的効果の予測可能性についても言及している。既知の抗原に対するモノクローナル抗体の創造性の評価について、クレームされたモノクローナル抗体の有利な機能及び用途を決定する重要な配列の違いの非自明性に基づいて創造性が認められ得ることが追記された。

 

 


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