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EPO EPO審査ガイドライン改訂①

浅村特許事務所 知財情報 
 2019年11月8日


EPO EPO審査ガイドライン改訂①


 

ここ数年、毎年11月にEPO審査ガイドラインが改定されていますが、今年も新しいガイドライン(Guidelines for Examination)が2019年11月1日から施行されています。

審査に直接関係するパートとしては、数値範囲の新規性(選択発明)の新規性・進歩性に関するPart G Chapter VI-8とVII-12、明確性に関するPart F のChapter VI-4などでしょう。

今回は「数値範囲の新規性(選択発明)」に関して改訂された点について述べます(Part G Chapter VI-8 (ii))。改定のあるページの右上にあるShow modificationsにチェックを入れると2018年度版からの修正部分が赤くハイライトされるようになっています。

従来技術のより広い数値範囲から選択された狭い範囲(サブ範囲)の新規性は以下の条件の下、新規性があるとみなされます:
(a) 選択されたサブ範囲が公知の範囲より狭いこと。
(b) 選択されたサブ範囲が従来技術に開示されている特定の実施例からも、公知の範囲の両端点からも十分に遠く離れていること。』

改定前のガイドライン(2018年版)では、この条件のほかに、 「(c)選択された範囲が従来技術の任意の例(specimen)ではない、すなわち従来技術の単なる実施態様ではなく、別の発明であること(目的に適った選択(purposive selection)、新しい技術的教示)。」という条件
がありましたが、今回の改定ではこれは削除されました。この条件は進歩性の判断のみについて考慮されることになりました。選択発明の進歩性に関するガイドラインPart G Chapter VII-12にも、審決(T261/15)により「目的に適った選択を表すサブ範囲は進歩性の問題であり、新規性を確立するためには必要ではないことが確認された」と記載されています。

そのあとに続く新しい審査ガイドラインの説明によれば、「クレームされたサブ範囲でのみ発生する効果は、それ自体でそのサブ範囲に新規性を付与できるわけではない。しかし、公知の範囲全体ではなく、選択されたサブ範囲で生じるそのような技術的効果は、本発明が新規であり、単に従来技術の例ではないことを確認するものである。「狭い」および「十分に遠く離れている」の意味は、ケースバイケースで決定する必要がある。 選択された範囲内で発生する新しい技術的効果は、より広い公知の範囲で達成されるものと同じ効果であってもよいが、より大きな程度で達成されるものである。」となっており、条件(c)への言及が削除されています。

審査ガイドラインは法律ではありませんが、EPOプラクティスの有用なガイドであり、EPOでの現在のプラクティスと一致させたものです。EPOでの確立したプラクティスの証拠として審査官によって審査手続き中に引用されるものですが、出願人の立場から見れば、審査官がどのように特許法を適用すべきかについて意見書などで引用することもできます。