浅村特許事務所 知財情報
2016年1月15 日
日本/韓国/アメリカ ~日米/韓米協働調査試行プログラム(CSP)~
2015年8月1日に、更なる外国特許取得の需要に応えるべく、日米間で新たに「日米協働調査試行プログラム(CSP: Collaborative Search Pilot Program)」を開始しました。更に、2015年9月1日に、韓米間で「韓米協働調査試行プログラム」を開始しました。CSPとは、日米又は韓米の両国に特許出願した発明について、両国の審査官がそれぞれ調査を実施し、その調査結果及び見解を共有した後に、それぞれの特許審査官が、それぞれ最初の審査結果を送付するものです。
一方で、特許審査ハイウェイ(PPH:Patent Prosecution Highway)と称する二国間での審査協力も実施されています。PPHでは、第1国の出願における特許可能と判断された請求項に基づいて、第2国の対応出願における請求項が審査されます。しかし、PPHでは、登録一歩手前までいっている第1国の出願をベースにしなくてはならないので、第2国での特許取得時期との間にタイムラグが生じます。それに対して、CSPは、最初の審査結果を送付までは、両国の審査官が調査結果や見解を共有して審査を進めていくため、審査・権利取得の時期に関する予見性が向上すると共に、両国の特許審査官による調査結果を踏まえたより強く安定した権利を、早期に取得することが期待できます。
CSPでは、最初の審査結果が送付された後は、各国で自由に補正ができます。例えば、最初の審査結果送付後の補正等が可能な時期に、発明のカテゴリが異なるクレームを変更/追加する補正(物を方法にする補正や、治療方法を用途限定付き組成物にする補正など)も可能になります。
また、両国で調査結果が共有されますので、日本または韓国の拒絶理由通知で引用された文献を、米国へ情報開示する手間を減らせる可能性もあります。
日米/韓米のCSPの申請要件は、別紙に示すように概ね同じですが、注意すべきは、日米/韓米においては対象となるクレームの対応関係が多少異なること、日本においては「公開」もCSP請求時期の要件であること、米国においては出願人がFirst Action Interview Program(http://www.uspto.gov/patents-application-process/applying-online/full-first-action-interview-pilot-programを参照)を受け入れることなどです。
日米韓の何れでも特許化を目指す場合には、日米CSPと韓米CSPの両方を同時期に請求することで、事実上、日米韓のCSPが期待できるかもしれません。
日米/韓米に出願(PCT国内移行)時の早期審査の選択肢のひとつとして検討されてはいかがでしょうか。
日米/韓米協働調査試行プログラムの申請要件の概要(日韓は申請不可)
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日本での申請要件 |
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米国での申請要件 |
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韓国での申請要件 |
クレーム |
請求項総数20以内、独立請求項3以内。 |
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請求項総数20以内、独立請求項3以内。 |
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請求項総数20以内、独立請求項3以内。多項従属請求項不可。 |
クレームの対応関係 |
全ての独立請求項に対し、米国出願に対して、実質的に対応する独立請求項を有すること(独立請求項の対応関係は、個別判断)。 |
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両国間でクレームが対応していること 。(対応関係の要件は、日米と韓米とでは多少異なる。) |
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米韓で請求項が同一であること。発明のカテゴリの変更不可。
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請求可能な時期 |
審査着手前(「拒絶理由通知の通知等が到達する前」)かつ公開済みの出願であること。(審査請求と同時に申請可能)。 |
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審査着手前であること。 |
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審査着手前であること。 CSP申請時に審査請求済であること(審査請求と同時に申請可能)。 |
優先日 |
対応する独立請求項の最先の優先日が同じであること。 全ての出願の優先日・出願日のうち、最先の日付が2013年3月16日以降であること。 |
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最先の優先日がPost-AIA(2013年3月16日以降)以降 であること。 |
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最先の優先日が同じであること。 最先の日付が2013年3月16日以降であること。 |
申請単位・単一性 |
申請は、1出願単位。技術的に関連する一群の出願について、まとめて申請可能。 |
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単一の発明であること。 |
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申請は、1出願単位。単一性の要件も満たすこと。 |
その他 注意点 |
事業戦略対応まとめ審査、早期審査及びスーパー早期審査を申請していないこと。 |
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First Action Interview Programを受け入れること。 |
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米韓出願人が同一であること。 |
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