浅村特許事務所 知財情報
2014年6月20日
インド 特許取消のための審判及び訴訟が同時に進行し得るかに関する最高裁判所の判決
【要約】 特許を取消すための手段である、特許付与後異議申立手続(特許法第25条(2))、特許取消審判(第64条)、及び侵害訴訟における反訴(第64条)は、いずれも同時に進行させることはできないと判示した。 |
2014年6月2日、インドの最高裁判所において、Dr. Aloys Wobben & Anr. Vs. Yogesh Mehra & Ors.事件について、重要な判決が出された。本判決において、最高裁判所は、特許法に従う複数の取消手続が適法に並存しうるかに関して審理した。
特許付与後異議申立手続(特許法第25条(2))とは別に、「利害関係人」は知的財産控訴委員会(IPAB)に特許取消審判の請求をすることにより、「又は」、高等裁判所における侵害訴訟において反訴を提起することにより、特許の取消を求めることができる(特許法第64条)。
(1) 特許取消審判と侵害訴訟における反訴(第64条)との関係(同時係属の可否)について
最高裁判所は、第64条に規定されるこれら2つの救済手段(特許取消審判及び侵害訴訟における反訴)について審理し、第64条は、「又は」という二者択一的な言葉によって、2つの救済手段を区別しているのだから、同じ理由に基づいて、2つの救済手段を同時に利用することはできないとの結論に至ることは避けられないと判示した。
そして、最高裁判所は、特許取消審判の請求及び侵害訴訟における反訴の提起は、共同的な救済手段ではなく、いずれかを選択すべきものであると判示した。
(2) 特許付与後異議申立(第25条(2))と特許取消審判請求又は反訴提起(第64条)との関係について
更に、最高裁判所は、特許付与後異議申立手続(第25条(2))が開始された場合には、同一人によって、特許取消審判の請求又は反訴の提起(第64条)はできないと判断した。その理由として、最高裁判所は、第64条冒頭の「本法の規定に従うことを条件として」のフレーズ(このフレーズにより、第64条が特許法の他の全ての規定に対して従属的な位置付けとされる。)から当然もたらされる結論であると述べた。
(3) 特許取消審判請求及び反訴提起(第64条)の関係(先後)について
更に、最高裁判所は、2つの救済手続が開始された場合、いずれの救済手段を追行することができるかに関する問題も審理した。最先請求優先の原則及び民事訴訟法第10条に基づいて、最高裁判所は、反訴は侵害訴訟とは別の独立した訴訟という性質のものであり、特許取消審判が既に開始されている場合には、同じ理由に基づいて、侵害訴訟において反訴を提起することは認められない、と述べた。同様に、特許取消審判より先に、侵害訴訟において反訴が提起された場合には、反訴の手続が進められ、特許取消審判は認められない、とも述べた。
この判決は直ちに現在係属中の訴訟事件に影響を及ぼし、訴訟当事者は新たな作戦を展開せざるを得ないだろう。潜在的は訴訟当事者にとって或る特許を取り消すために最も効果的な手段を決定する前にあらゆる可能性を評価することが従前より一層重要となったのだから、この判決は有意義でもある。
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