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日本 イノベーション拠点税制

2025年 3月27日
浅村特許事務所 知財情報


日本 イノベーション拠点税制


 


 




 イノベーション拠点税制(日本におけるイノベーションボックス税制)とは、
知的財産権のうち特許権やAI関連プログラムの著作権から生じるライセンス料や譲渡益の所得に対し、
30%の所得控除がされる国内優遇税制制度です。
 日本企業の無形資産投資を税制制度から促すことを目的として、導入されます。

 

 

1.適用期間

 イノベーション税制制度は、2025年 4月に施行される予定です。
 2025年 4月 1日から2032年 3月31日の間に開始する各事業年度に適用されます。

2.本税制の対象となる知的財産権(特定特許権等)

 ・特許権 (2024年 4月 1日以降に登録された特許権に限る)

 ・AI関連のソフトウェアの著作権 (2024年 4月 1日以降に発生(創作)した著作権に限る)

① AIモデルによる機械学習をサポート(効率化・性能向上)するプログラム
例:学習に必要なデータのタグ付けツール、RAG(検索拡張生成)等

② AIモデルによる機械学習アルゴリズムそのもののプログラム
例:基盤モデルや、個別の環境に特化したモデル等

③ 機械学習アルゴリズムの実現に必要なプログラム
例:クラウド上でGPU等のハードウェアを稼働させるために必要な制御ソフト等       
なお、AIを活用したアプリケーション(アプリのUI等)は適用されません。

 従って、特許以外の産業財産権(実用新案権、意匠権、商標権)には適用がありません。
 対象知財と非対象知財を含む複数知財を同時に取引する際には、対象知財の対価の額を明らかにする必要があります。

 なお、本税制の対象範囲につきましては、今後、状況に応じて対象を拡大する見直しが検討されるとのことです。

3.本税制が適用される所得

 ・ライセンス所得:特定特許権等をライセンスしたことによる所得
 (特許権においては、専用実施権や独占的通常実施権等の独占的ライセンスへの支払ライセンス料に限る)
 ただし、関連者*にライセンスをしたことによる所得は含まない。

 ・譲渡所得:特定特許権等の譲渡したことによる所得
ただし、関連者*へ譲渡したことによる所得、国外の法人へ譲渡したことによる所得は含まない。
また、知的財産権を有する製品(embedded IP)の譲渡所得は含まない。

*関連者: 移転価格税制における関連者の定義と同様
・親子関係(親法人が子会社の法人の発行済み株式や議決権割合(株式等)を、
      直接(親子関係)または間接(孫関係)に50%以上保有している関係)
・兄弟関係(親企業が複数子法人それぞれの株式等を50%以上有している場合)
・実質的支配関係(一方の法人の役員の半数以上がもう一方の法人の役員も兼任している場合)
        (資本金の半分以上が一方から提供されている場合)等

4.本税制が適用される条件

 企業が主に「国内で」、「自ら」 開発した特定特許権等に限られる。

5.本税制適用の効果

 ・本税制の対象範囲となる所得金額の30%を損益算入することができる(所得控除率30%)。
  法人税率に換算すると7%程度の減税(法人税実効税率20%相当)となります。

 ・費用が収益を上回る場合(損失が発生する場合) 翌年度以降に当該損失分を繰り越し、翌年度の対象所得と損益通算ができます。

6.損金算入額の計算

 損金算入額 =「本税制の対象範囲となる所得金額(制度対象所得額)」× 30%

 「本税制の対象範囲となる所得金額(制度対象所得額)」とは、
  ・特定特許権等のライセンス所得額

   若しくは

  ・特定特許権等の譲渡所得額
    に、企業が主に「国内」で「自ら」行った研究開発の割合(自己創出比率)を乗じた額

   自己創出比率 = ② 適格研究開発費 / ① 研究開発費合計額

① 研究開発費合計額
当期及びその前期以前(*1)において生じた研究開発費の額(*2)のうち、
その特許権譲渡取引に係る特許権等に直接関連する研究開発に係る金額の合計額。
(なお、経過措置期間中(2025年 4月 1日~2027年 3月31日まで)は、原則、企業全体の研究開発費を用いる。)

  (*1)2025年 4月 1日以後に開始する事業年度に限る
 (*2)研究開発費の額:研究開発費等に係る会計基準における研究開発費の額に「一定の調整を加えた金額」(*3)
 (*3)一定の調整を加えた金額:試験研究費に直接関連しない資産の償却費や支払利子を除いた額)。

② 適格研究開発費
自らが国内で行った研究開発費及び外注費。

 すなわち、研究開発費合計額のうち、以下1)~3)の金額を除いた額
 1)特定特許権等の取得費や支払ライセンス料
 2)国外関連者に対する委託試験研究費
 3)国外事業所等(PE)を通じて行う事業に係る研究開発費の額

 

7.経済産業省による証明書の交付

 経済産業省に所定の申請書を提出することにより、本税制の対象となる知的財産権である旨の証明書が経済産業省から交付され、当該証明書をもって税務申告続きを行うことができます。

 ●対象知財であることや、その知財に関連する研究開発の判別については、経産省において確認・証明を実施。
 ●AI関連のプログラムの著作物であることについては、専門的な知見が必要であることから、
  (一社)ソフトウェア協会による事前確認を受ける運用とする。
 ●対象知財であることや、その知財に関連する研究開発の判別については、経産省において確認・証明を実施。

特許権 

 

AI関連ソフトウェアの著作物

 

申請書

1.特許権
特許番号、登録日

2.AI関連ソフトウェアの著作物
製造日、プログラムの名称、プログラムの概要

3.研究開発テーマ 
実施内容、実施時期、担当部署、特許権・AI関連ソフトウェアの著作物と研究開発テーマの関連性、 他者からの対象知財の取得・ライセンスの有無、海外関連者への委託研究開発活動の有無、PEでの研究開発活動の有無

 

8.イノベーション拠点税制の詳細

 イノベーション拠点税制の詳細については、
経済産業省「イノベーション拠点税制(イノベーションボックス税制)について (METI/経済産業省)」のHPにて、 イノベーション拠点税制のガイドラインが公表される予定です(2025年 3月下旬)。