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日本 原出願が審判係属中の分割出願に対する審査中止の運用の開始(2023年 4月 1日より)

2023年 3月 3日
浅村特許事務所 知財情報


日本 原出願が審判係属中の分割出願に対する審査中止の運用の開始(2023年 4月 1日より)


 


 原特許出願が前置審査又は拒絶査定不服審判係属中の分割出願であって、出願人又は代理人から申請がされた案件について、原出願の前置審査又は審判の結果が判明するまで当該分割出願の審査を中止する運用が、2023年4月1日から開始されます(特許法第54条第1項適用)。

 この運用が開始されることにより、原出願の前置審査又は拒絶査定不服審判の結果を踏まえて、分割出願の対応を検討することが可能となり、より効率的な出願戦略の構築につながると期待されます。

 

 

1.適応条件

 以下の(1)~(4)の全ての要件を満たす特許出願であることが必要です。

(1)2023年4月1日以降に出願審査請求を行い、かつ、審査着手前の(分割)出願であること

(2)原出願の拒絶査定後に分割した分割出願であること

(3)原出願について拒絶査定不服審判請求を行い、当該原出願が前置審査又は拒絶査定不服審判に係属中であること

(4)原出願の前置審査又は審判の結果を待つことが便宜であるもの*1

*¹ ① 原則として(4)の要件を満たすものと扱います。

② ただし、分割出願の願書における請求項の記載が、「具体的な発明特定事項を含まないことが明らかなもの」である場合、(4)の要件を満たさないものと扱われ、当該分割出願は審査中止運用の対象出願となりません。

③ 「具体的な発明特定事項を含まないことが明らかなもの」の例
「【請求項1】 明細書に記載の発明。」(分割出願を行った後に自発補正することを前提にした請求項の記載等)。

 

2.申請

(1)申請期間

  対象となる分割出願の出願審査請求日から起算して5開庁日以内

(2)申請手続

    以下の①及び②の手続を行う。

① 対象となる分割出願について、特許法第54条第1項の適用について事情を説明する旨の上申書を提出

② 対象となる分割出願について、特許法第54条第1項の適用について事情を説明する旨を専用のフォームにより送信

 

3.申請提出後の流れ

(1)申請に基づいて当該分割出願が本運用の適用対象となるか否かを判断した後、判断結果がメールで通知されるとともに、応対記録が作成されます。

(2)本運用の適用対象となった場合、原出願において以下の ①~③のいずれかがなされてから3か月後まで、当該分割出願の審査が中止されます。

  ① 前置審査において出願人に特許査定の謄本が送達される

  ② 拒絶査定不服審判において出願人に最初の審決*2の謄本が送達される

  ③ 審判請求が取下や却下となる

    *2 審決取消訴訟が提起され、その結果として再開された査定不服審判における審決は含まれません。

(3)上記 ①~③のいずれかにより審査中止の期間が終了する場合、その旨がメールで通知されるとともに応対記録が作成されます。

(4)出願人は、中止期間の終了日までに、原出願の前置審査又は審判の結果を踏まえ、「出願を分割する際の説明書類に関する出願人への要請について」に記載の、上申書を提出します。

(5)審査中止の終了後は、上記(2)①~③のいずれかの契機から起算して、通常の出願と同様の審査順番待ち期間を経て審査に着手されます。

 

4.分割出願に係る延長登録の出願によって特許権の延長をすることができる期間への適用

当該分割出願に係る審査中止期間は、期間補償のための特許権の存続期間の延長(特許法第67条2項)において、特許法第67条3項10号の「その特許出願に係る特許法令に規定による手続が中断した場合における当該手続きが中断した期間」が適用され、「基準日*3から特許権の設定の登録の日までの期間に相当する期間」から控除される期間に該当します。

基準日*3 :特許権の設定登録が特許出願の日から起算して5年を経過した日、又は出願審査の請求日から起算して3年を経過した日のいずれか遅い日(第67条2項)

詳しくは、原出願が審判係属中の分割出願に対する審査中止の運用について | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)をご参照ください。